業績リスト

A02-003櫻井グループ

論文等 | 原著論文

2018

*Hiroyuki Kitahata, Natsuhiko Yoshinaga,
Effective diffusion coefficient including the Marangoni effect,
Journal of Chemical Physics 148, 134906/1-8 (2018).

概要: 樟脳の円板を水面に浮かべると樟脳分子が溶けだし、表面張力差を生み出すためマランゴニ対流が発生する。このマランゴニ対流による輸送のため、樟脳分子はバルク中の拡散と比べて非常に速く広がる。この輸送現象を拡散係数に組み込めないかと考え、第一段階として樟脳粒が固定されている場合を考えた。定常状態での流れ場と樟脳分子の濃度場を計算し、それを実効的な拡散係数を用いて表すことを試みた。その結果、波数には依存するもののマランゴニ対流による樟脳分子の輸送を実効的な拡散係数で近似できることを示した。 【義永那津人(計算方法、理論解析に関する議論)】

Masakazu Kuze, Hiroyuki Kitahata, Oliver Steinbock, and *Satoshi Nakata,
Distinguishing the dynamic fingerprints of two- and three-dimensional chemical waves in microbeads,
Journal of Physical Chemistry A 122, 1967-1971 (2018).

概要: マイクロビーズに鉄錯体の触媒を吸着させたものを触媒を除いたBZ反応水溶液に入れるとビーズでのみBZ反応が起こる。触媒の吸着時間を変化させることによりマイクロビーズの表面だけに吸着したものとビーズ内部全体にわたって吸着したものを作成できた。それらのビーズを用いてBZ反応を観察したところ、前者では球面上のみを伝播する化学波が、後者では球体内を伝播する化学波が観察された。二通りの場合について、化学波の速度の変化の様子、および、らせん波の生成について実験と理論的計算を基に議論した。 【北畑裕之:理論的解析】

Ryoichi Tenno, You Gunjima, Miyu Yoshii, Hiroyuki Kitahata, Jerzy Gorecki, Nobuhiko Jessis Suematsu, and *Satoshi Nakata,
Period of oscillatory motion of a camphor boat determined by the dissolution and diffusion of camphor molecules,
Journal of Physical Chemistry B 122, 2610-2615 (2018).

概要: プラスチック板の下に樟脳粒をつけたものを樟脳粒が下になるように水面に浮かべると、プラスチック板の下部を樟脳分子が拡散する。そして、プラスチック板の端での濃度がある閾値以上になると表面張力差によってプラスチック板が急に動き始め、しばらく運動したのち静止する。その後も静止と運動を間欠的に繰り返す様相が観察される。この間欠的な運動の周期は、系の温度が高いほど短くなる。この温度依存性に関して、拡散係数や粘性、樟脳の溶解率をもとに議論した。 【北畑裕之:理論的解析】

*Satoshi Nakata, Katsuhiko Kayahara, Hiroya Yamamoto, Paulina Skrobanska, Jerzy Gorecki, Akinori Awazu, Hiraku Nishimori, and Hiroyuki Kitahata,
Reciprocating motion of a self-propelled rotor induced by forced halt and release operations,
Journal of Physical Chemistry C 122, 3482-3487 (2018).

概要: 中心に小さな穴のあいた六角形のプラスチック板の各頂点に樟脳粒をつけた回転子を作成し、水槽中に垂直に固定した軸を穴に通して水面に浮かべることにより、回転運動のみが可能な系を考える。この系はカイラルな対称性はないが自発的に対称性を破って時計回りまたは反時計回りに回転し続ける。この系が回転している際に強制的に板に力を加えてしばらく静止させ、その後、解放するともともと回転していた向きとは逆向きに回転することを見出した。この現象のメカニズムに関して、樟脳粒まわりの流れの様子や表面張力差の時間変化をもとに議論した。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論】

2017

*Shin-Ichiro Ei, Hiroyuki Kitahata, Yuki Koyano, Masaharu Nagayama,
Interaction of non-radially symmetric camphor particles,
Physica D 366, 10-26 (2017).

概要: 円対称ではない形状の樟脳粒の運動に関して、数理モデルから中心多様体縮約によって位置と特徴的な角度の時間発展に関する常微分方程式を導いた。また、そのような樟脳粒2つが相互作用する系の時間発展に関する式も導いた。濾紙に樟脳をしみこませた系を中心に穴があいた楕円形に成型し、軸に通して水面に浮かべることにより重心が動かない実験系を構築し、単独では静止する条件の楕円形の樟脳粒子2つを相互作用させたときに長軸が2つの楕円形の中心を結ぶ直線に直交する向きに配向することを明らかにした。この実験結果は中心多様体集約で得られる常微分方程式の解析結果および元の数理モデルの数値計算結果と一致することも明らかにした。 【北畑裕之(数値計算と実験)】

*Shuji Ishihara, Philippe Marcq, Kaoru Sugimura,
From cells to tissue: A continuum model of epithelial mechanics,
Physical Review E 96, 022418 (2017).

概要: 上皮組織を記述する連続体モデルの導出を行った。このモデルは、細胞形を表す内部自由度をもち、組織の変形を個々の細胞の変形の効果と細胞の配置換えの二つに切り分けることができる。また、細胞のもつ能動性をとりいれて、組織の自発的変形を解析することもできる。

Yasuyuki Kobayashi*, Hiroyuki Kitahata, and Masaharu Nagayama,
Sustained dynamics of a weakly excitable system with nonlocal interactions,
Physical Review E 96, 022213/1-8 (2017).

概要: 表皮細胞組織での興奮波であるカルシウム波の伝播について、興奮波が有限の距離しか伝播しないことが知られている。このような有限伝播の特徴をもつ興奮場セルオートマトン系に、神経に相当するリンクを導入し、遠距離に興奮状態を伝えられるようにした。数値計算により、一度興奮した状態が維持されるかどうかが有限伝播距離およびリンク密度によって異なることが明らかとなった。興奮状態が維持できるパラメータの境界について、ある極限に関しては解析的な見積もりを行うことができ、数値計算結果とも一致することが明らかとなった。 【北畑裕之:数値計算結果に関する考察および理論解析】

*Yuki Koyano, Marian Gryciuk, Paulina Skrobanska, Maciej Malecki, Yutaka Sumino, Hiroyuki Kitahata, and Jerzy Gorecki,
Relationship between the size of a camphor-driven rotor and its angular velocity,
Physical Review E 96, 021609/1-8 (2017).

概要: 界面活性剤を周囲に拡散させ、自発的に界面張力勾配を作って運動する自己駆動粒子を二つつなぎ重心を固定した系を考える。この系は回転方向に運動の自由度を持つがカイラルな対称性があるため、静止した解からパラメータの変化により回転運動に分岐することが予想される。具体的には、樟脳粒をプラスチック板の両端に接着して対称な回転子を作り、中心を軸で固定した系を用いて実現される。本論文では、分岐点および回転速度の回転子半径依存性に着目した。実験結果および、モデルの解析、数値計算の結果について報告する。 【北畑裕之:数値計算、理論解析に関する議論】

*Jerzy Gorecki, Hiroyuki Kitahata, Nobuhiko J. Suematsu, Yuki Koyano, Paulina Skrobanska, Marian Gryciuk, Maciej Malecki, Takahiro Tanabe, Hiroya Yamamoto, and Satoshi Nakata,
Unidirectional motion of a camphor disk on water forced by interactions between surface camphor concentration and dynamically changing boundaries,
Physical Chemistry Chemical Physics 19, 18767-18772 (2017).

概要: 水面の樟脳粒が自発的に運動する系を用いて、ダイオード的な振る舞いをする系を構築した。具体的には、長方形水路の一部に円形領域を設け、軸を固定した2枚のゲートを設置する。これらのゲートは樟脳粒が拡散する樟脳分子に起因する表面張力によって開閉する。その結果、樟脳粒が一方から近づいたときにはゲートが開き、樟脳粒はゲートを通過することができるが、他方から近づいたときにはゲートが開かず、樟脳粒がゲートを通過できないというダイオード的な挙動を観察することができた。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論、数値計算】

*Kei Nishi, Shogo Suzuki, Katsuhiko Kayahara, Masakazu Kuze, Hiroyuki Kitahata, *Satoshi Nakata, and *Yasumasa Nishiura,
Achilles’ heel of a traveling pulse subject to a local external stimulus,
Physical Review E 95, 062209/1-8 (2016).

概要: Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応は反応拡散系の実験モデルとして広く使われており、ルテニウム錯体を触媒として用いると光感受性を示す。このような光感受性BZ反応系を用いて、伝播する化学波に対しる外部摂動の影響を考察した。本研究においては、化学波の位置をカメラで検出し、外部摂動を化学波からの相対位置が一定になるようにパルス的に与えた。そして、化学波に対する相対位置および外部摂動のパルス幅によって化学波が消滅するか、伝播し続けるかが異なることを明らかにした。また、同様の外部摂動に対する影響を数値計算により調べ、化学波の少し前方あたりにもっとも外部摂動に対して感受性の高い、すなわち、化学波が消滅しやすい部分があることを明らかにした。 【北畑裕之:実験装置・メカニズムに関する議論】

Naoko Ueno, Taisuke Banno, Arisa Asami, Yuki Kazayama, Yuya Morimoto, Toshihisa Osaki, Shoji Takeuchi, Hiroyuki Kitahata, and *Taro Toyota,
Self-propelled motion of monodisperse underwater oil droplets formed by a microfluidic device,
Langmuir 33, 5393-5397 (2017).

概要: 界面活性剤水溶液中に油滴を注入すると自発的に運動することがこれまでに知られている。本論文では、マイクロ流路を用いて、注入する液滴のサイズを変化させたときの結果を報告する。油滴のサイズが異なると、自己駆動する際の液滴の速度も変化する。実験により、駆動速度が最大となる液滴半径があることが明らかとなった。また、そのメカニズムについての定性的な議論も行った。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論、豊田太郎:研究の総括】

Keita Kamino, Yohei Kondo, Akihiko Nakajima, Mai Honda-Kitahara, Kunihiko Kaneko, Satoshi Sawai,
Fold-change detection and scale-invariance of cell-cell signaling in social amoeba,
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 114(21), E4149-E4157 (2017).

概要: 細胞性粘菌キイロタマホコリカビの集合過程で行われる細胞間コミュニケーションにおいて、個々の細胞が、誘引シグナル分子濃度の絶対値ではなく、濃度の「変化の比」に対して応答していること(「倍変化検出」)、これによって幅広い細胞密度において細胞間コミュニケーションが実現されることを明らかにした。この発見は、感染や免疫反応、発生など、細胞外シグナル分子濃度が不確定になりやすい状況において、いかに再現性よく頑健に細胞間コミュニケーションが実現されるかの基礎的理解に寄与することが期待される。

*Hiroyuki Kitahata, Hiroya Yamamoto, Misato Hata, Yumihiko S. Ikura, *Satoshi Nakata,
Relaxation dynamics of the Marangoni convection roll structure induced by camphor concentration gradient,
Colloids and Surfaces A 520, 436-441 (2017).

概要: 界面活性と昇華性をもつ樟脳の粒を水面に近づけると、樟脳分子が水面に吸着され、マランゴニ対流が発生する。水面に小さなプラスチック板を浮かべておくと、樟脳粒を水面に近づけたときマランゴニ対流のために樟脳粒から遠ざかる。ところが、樟脳粒を遠ざけるとプラスチック板がもともと樟脳粒があった位置に近づく現象が見られた。これは、マランゴニ効果により水面がマイクロメートルオーダーでくぼんでおり、そのくぼみが戻る際の流れによるものだと示唆される。この現象について実験的、理論的な考察を行った結果を報告する。 【北畑裕之(メカニズムに関する議論、数値計算)】

2016

Yuki Koyano, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Oscillatory motion of a camphor grain in a one-dimensional finite region,
Physical Review E 94, 042215/1-8 (2016).

概要: 樟脳粒は水面に浮かべると樟脳分子が水面に拡がることで水面の表面張力を下げる。粒が対称な形状であっても、自発的に樟脳分子濃度のプロファイルの対称性が崩れ、ある方向に運動することが知られている。今回、擬1次元の水路での樟脳粒の運動について、実験および理論的解析、数値計算を行った。その結果、水相の粘性や水路の長さにより、水路の中心に静止する状態から、水路内を往復する運動に分岐することがわかった。数理モデルを縮約することでその分岐がホップ分岐であることが明らかになり、粘性や水路の長さに対する依存性も再現することができた。 【櫻井建成(メカニズムに関する議論)、北畑裕之(研究のとりまとめ)】

Akihiko Nakajima, Motohiko Ishida, Taihei Fujimori, Yuichi Wakamoto, *Satoshi Sawai,
The Microfluidic lighthouse: an omnidirectional gradient generator,
Lab on Chip 16(22), 4382-4394 (2016).

Elisa Herawati, Daisuke Taniguchi, Hatsuho Kanoh, Kazuhiro Tateishi, Shuji Ishihara, and Sachiko Tsukita,
Multiciliated cell basal bodies align in stereotypical patterns coordinated by the apical cytoskeleto,
The Journal of Cell Biology 214, 571–586 (2016).

概要: マウス気管の他繊毛細胞の発生における繊毛の配列過程を、基底小体の長期ライブセルイメージングで追跡し、始め散らばっていたパターから、配列する過程が各発生ステージでどのように発達、遷移するかを調べた。また、細胞アピカル面に発達する細胞骨格系との相互作用という観点から、アクティブハイドロダイナミクスに基づく数理モデルを構築し、基底小体の配列を自己組織化現象として説明した。同時に、細胞平面内極性(PCP)との相互作用についても考察を行った。

Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, *Alexander S. Mikhailov,
Hydrodynamic collective effects of active proteins in biological membranes,
Physical Review E 94, 022416/1-11 (2016).

概要: 生体膜上にはポンプやモーターなどの機能を担う活性タンパク質が多数存在する。生体膜は熱ゆらぎによってだけではなく、これらの活性タンパク質の周期的な形態変化により、揺動を受けると考えられる。そこで、本研究では、生体膜を2次元流体、活性タンパク質を流れを駆動するフォース・ダイポールと見なして構築されたモデルを元に、複数の活性タンパク質によって協同的に引き起こされる生体膜内の流れについて、理論的・数値的にその挙動を調べた。 【北畑裕之(数値計算および理論解析の補助)】

Taisuke Banno, Arisa Asami, Naoko Ueno, Hiroyuki Kitahata, Yuki Koyano, Kouichi Asakura, *Taro Toyota,
Deformable self-propelled micro-object comprising underwater oil droplets,
Scientific Reports 6, 31292/1-9 (2016).

概要: 水中を変形しながら泳ぎ回るアメーバ様の動きをする細胞サイズの人工の油滴を創製し、顕微鏡画像を用いた運動解析より、この油滴の運動機構は、油滴の後方で形成される強い流れ場と油滴内部の局所的な対流構造によって、速度変化の後に変形が誘起されるという新たな運動機構であることを推定した。 【豊田太郎(研究の総括、実験系の提案)】

*Satoshi Nakata, Hiroya Yamamoto, Yuki Koyano, Osamu Yamanaka, Yutaka Sumino, Nobuhiko J. Suematsu, Hiroyuki Kitahata, Paulina Skrobanska, and Jerzy Gorecki,
Selection of the Rotation Direction for a Camphor Disk Resulting from Chiral Asymmetry of a Water Chamber,
Journal of Physical Chemistry B 120, 9166-9172 (2016).

概要: 樟脳円板を円形の水面に閉じ込めるとその境界に沿って円運動する。そこで円形の境界を二つの半円の組み合わせと考え、その半円の中心をずらしていくことで境界にカイラルな非対称性を持たせ、その際の運動の変化を調べた。円形の場合には、樟脳円板ほぼ等確率で時計回り反時計回りに公転していたが、徐々に非対称性を上げていくと、その公転の向きが一方向に限定された。更に非対称性をあげると公転する運動は不安定になりカオス的な運動が現れた。本論文では数値計算を用いながらそのメカニズムを明らかにした。 【北畑裕之(メカニズムと数値計算に関する議論)】

Takayuki Torisawa, Daisuke Taniguchi, Shuji Ishihara, Kazuhiro Oiwa,
Spontaneous Formation of a Globally Connected Contractile Network in a Microtubule-Motor System,
Biophysical Journal 111, 373–385 (2016).

概要: 微小管のつくるネットワークの示すダイナミクスを調べた。in vitro構成系においてて、キネシンモーターEg5との濃度比に依存して、ネットワークの収縮や破砕(rupture)が起こることを確認した。また、アスター間の引っ張りを考慮した数理モデルを考え、モーター濃度や性質に依存して表せる微小管ネットワークの振る舞いを説明した。

Fumihito Fukujin, Akihiko Nakajima, Nao Shimada, *Satoshi Sawai,
Self-organization of chemoattractant waves in Dictyostelium depends on F-actin and cell–substrate adhesion,
Journal of The Royal Society Interface 13(119), 20160233 (2016).

Hironobu Nogucci and Shuji Ishihara,
Collective dynamics of active filament complexes,
Physical Review E 93, 052406/1-10 (2016).

概要: 形態のあるバイオフィラメントをモデル化し、その集団がつくるネットワークのダイナミクスを調べた。

Yui Matsuda, Nobuhiko J. Suematsu, Hiroyuki Kitahata, Yumihiko S.Ikura, and *Satoshi Nakata,
Acceleration or deeleration of self-motion by the Marangoni effect,
Chemical Physics Letters 654, 92-96 (2016).

概要: 樟脳粒や樟脳船を水面に浮かべると表面張力差を生み出して運動する。この運動を擬一次元的な水路で行うと、その水相の深さによって運動速度が異なった。特に樟脳粒の場合には、水相が深くなるにつれて運動速度が速くなるのに対し、樟脳船では深くなるにつれて運動速度が遅くなる傾向が見られた。この現象に関して、水相に発生するマランゴニ対流の構造や強度をもとに議論し、そのメカニズムを明らかにした。 【北畑裕之(実験データ解析補助およびメカニズムに関する議論)】

Ken H. Nagai, Kunihito Tachibana, Yuta Tobe, Masaki Kazama, Hiroyuki Kitahata, Seiro Omata, *Masaharu Nagayama,
Mathematical model for self-propelled droplets driven by interfacial tension,
Journal of Chemical Physics 144, 114707/1-8 (2016).

概要: 界面張力により駆動される液滴について、系のエネルギーを考えてLagrangeanを構成することにより、その運動を記述することを試みた。このようなアプローチにより、液滴が運動するだけではなく、分裂や融合、反射する様子も定性的に再現することができた。 【北畑裕之(モデル構築に関する議論)】

*Yutaka Sumino, Norifumi L. Yamada, Michihiro Nagao, Takuya Honda, Hiroyuki Kitahata, Yuri B. Melnichenko, and Hideki Seto,
Mechanism of Spontaneous Blebbing Motion of an Oil−Water Interface: Elastic Stress Generated by a Lamellar−Lamellar Transition,
Langmuir 32, 2891-2899 (2016).

概要: カチオン性界面活性剤の水溶液の上にアニオン性界面活性剤の油の液滴を載せたとき、界面で自発的にブレブの生成が起こる。kれまでに、界面にできる会合体に関して、マイクロビームSAXS観察を行ってきた。本論文では、この会合体に関してSANS観察を行い、ブレビング運動をしているときに生成されている会合体が、時間とともに構造が変化することを明らかにした。また、運動するためには、今回観察された会合体が生成されることが必要であることを明らかにした。 【北畑裕之(メカニズムの考察に関する議論)】

Masanobu Horie, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Experimental and theoretical approach for the clustering of globally coupled density oscillators based on phase response,
Physical Review E 93, 012212/1-9 (2016).

概要: 少数個の振動子が結合した振動子系において、クラスタリングが見られることがある。この系を研究するために塩水振動子を用いたところ、塩水指導子を4個結合させた系において、2:2あるいは2:1:1のクラスタリングが見られた。この現象に関して、シンプルなモデルから位相応答を計算し、それをもとに安定性解析や数値計算を行い、考察した。  【櫻井建成:理論解析に関する議論、北畑裕之:研究のとりまとめ】

Haruka Sugiura, Manami Ito, Tomoya Okuaki, Yoshihito Mori, Hiroyuki Kitahata, and *Masahiro Takinoue,
Pulse-density modulation control of chemical oscillation far from equilibrium in a droplet open-reactor system,
Nature Communications 7, 10212/1-9 (2016).

概要: マイクロ流路中に水滴を流し、電場を与えて融合させることにより、マイクロ流路中の小さな領域を物質の出入りを制御できる化学反応槽とすることができた。その中で、物質の供給がないと起こりえないpH振動を起こすことに成功した。また、物質の流入、流出の割合を電場のオンオフで液滴の融合を制御することにより、制御することに成功した。物質の流入出の割合を変えたときの、pH振動反応の挙動に関して実験と数値計算で比較し、理論通り物質の流れをコントロールできていることを確かめた。  【北畑裕之:理論解析の補助】

2015

Boris Guirao, Stéphane Rigaud, Floris Bosveld, Anaïs Bailles, Jesus Lopez-Gay, Shuji Ishihara, Kaoru Sugimura, *François Graner, *Yohanns Bellaïche,
Unified quantitative characterization of epithelial tissue development,
eLIFE , 08519 (2015).

概要: 個体発生過程においては、組織の変形に細胞分、細胞の再配置、個々の細胞の変形、アポトーシスがそれぞれどのていど起用するかの定量化が必須である。我々はこの定量化を可能とする定式化を行い、実際にショウジョウバエの上皮系に適用した。

*Hiroyuki Kitahata, Rui Tanaka, Yuki Koyano, Satoshi Matsumoto, Katsuhiro Nishinari, Tadashi Watanabe,Koji Hasegawa, Tetsuya Kanagawa, Akiko Kaneko, and Yutaka Abe,
Oscillation of a rotating levitated droplet: Analysis with a mechanical model,
Physical Review E 92, 062904/1-8 (2015).

概要: 電荷を与えることにより浮遊させた液滴に外力を与え、微小変形の固有振動数を測定することにより表面張力が測定できることが知られている。この浮遊液滴を回転させた際に固有振動数が静止状態よりも高くなること、振幅を大きくしたときに固有振動数が低くなることが実験的に明らかになっている。今回、表面張力によるエネルギー変化と変形、回転によるエネルギーを考察することによって、見通し良く、固有振動数と液滴の回転角速度の関係を導くことができた。 【北畑裕之(理論解析、研究のとりまとめ)】

Masanobu Tanaka, Marcel Hörning, *Hiroyuki Kitahata, and Kenichi Yoshikawa,
Elimination of a spiral wave pinned at an obstacle by a train of plane waves: Effect of diffusion between obstacles and surrounding media,
Chaos 25, 103127/1-9 (2015).

概要: 興奮系にディフェクトがあるとき、ディフェクトにらせん波がトラップされることが知られている。このようならせん波は心臓でも見られており、そのらせん波の除去は重要な問題である。これまでに、物質の流出入がないディフェクトにトラップされたらせん波の除去可能性について議論した。今回、物質がディフェクト内に拡散できるときのらせん波の除去可能性について数値計算および解析を中心として調査した。 【北畑裕之(理論解析)、吉川研一(研究のとりまとめ)】

Shingo Miyazaki, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Coupling between a chemical wave and motion in a Belousov-Zhabotinsky droplet,
Current Physical Chemistry 5, 82-90 (2015).

概要: BZ反応の溶液を微小な液滴にしてオレイン酸に浮かべると内部で化学波が起こり、界面張力が変化するために液滴が自発的に運動することが知られている。本論文ではその現象についての実験結果および、Stokes方程式を使った流体力学でのメカニズムの提案に関するレビューをすると同時に、液滴内部での対流構造を可視化したので、その結果を報告する。また、化学波の開始地点と液滴の運動の様子、液滴サイズによる液滴運動の依存性に関する実験結果も報告する。 【櫻井建成(実験結果に関する議論)、北畑裕之(研究のとりまとめ)】

*Yasuaki Kobayashi, Hiroyuki Kitahata, and Masaharu Nagayama,
Model for calcium-mediated reduction of structural fluctuations in epidermis,
Physical Review E 92, 022709/1-7 (2015).

概要: 表皮細胞のカルシウム波のモデルを用い、表皮細胞のターンオーバーについての数値計算を行うと、表皮の基底層の凹凸が表皮の表面では緩やかになることがわかる。そこで,モデルを簡略化して細胞内カルシウム濃度と分化の度合いを変数とした連続モデルを提案し、基底層の凹凸や時間的なゆらぎが表皮の表面でどのように影響されるかを解析計算及び数値計算により議論した。 【北畑裕之(理論解析)】

Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and *Hiroyuki Kitahata,
General criteria for determining rotation or oscillation in a two-dimensional axisymmetric system,
Journal of Chemical Physics 143, 014117/1-6 (2015).

概要: 円形領域に閉じ込めた場合や中心力ポテンシャルが存在する場合など、2次元軸対称な系で動き回る自己駆動粒子は回転運動または振動運動をすることが様々な実験系で報告されている。それらの系ではどのようにして回転運動または振動運動が選ばれるか興味深い。そこで、2次元軸対称な空間内の自己駆動粒子の運動を記述する一般的なモデル力学系を構築し解析し、回転解と振動解の存在とその安定性条件を得た。また、求めた安定性条件が適用できない場合には、回転解や振動解に加え準周期的な軌道を示す解が安定に存在することを数値的に発見した。 【北畑裕之(研究の総括)、義永那津人(理論解析の補助)】

Tomohiro Sasaki, Nobuhiko J. Suematsu, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous recurrence of deposition and dissolution of a solid layer on a solution surface,
Journal of Physical Chemistry B 119, 9970-9974 (2015).

概要: 樟脳のメタノール溶液を空気中に静置すると、メタノールの蒸発に伴い溶液表面に樟脳の膜が生成する。ところが、いったん生成した樟脳の膜は、しばらくすると消滅し再び液面が現れる。その後、樟脳の膜の生成と消滅が周期的に現れる現象を見出した。本論文では、樟脳膜の生成、消滅の周期性を確認するとともに、そのメカニズムを知るため、溶液の温度と重量の経時変化を測定した。その結果、樟脳膜の消滅時に温度が低下し、その後徐々に上昇することがわかった。また重量は樟脳膜の消滅時に急激に減少することがわかった。これらをもとに周期的生成、消滅のメカニズムを議論した。 【北畑裕之(研究の総括)、櫻井建成(メカニズムの議論)】

*Kenji Kashima, Toshiyuki Ogawa, Tatsunari Sakurai,
Selective pattern formation control: Spatial spectrum consensus and Turing instability approach,
Automatica 56, 25-35 (2015).

概要: 本研究の目的は、自己組織的に発生する秩序の制御手法を確立することである。特に、不安定な定常解を持つ秩序に対して、継続的に安定な秩序を生み出すための手法について提案した。更に、その手法を用いた数値計算結果を紹介し、その数理構造も示した。 【櫻井建成(モデル系の提案とその議論)】

*Satoshi Nakata, Shogo Suzuki, Takato Ezaki, Hiroyuki Kitahata, Kei Nishi, and Yasumasa Nishiura,
Response of a chemical wave to local pulse irradiation in the ruthenium-catalyzed Belousov–Zhabotinsky reaction,
Physical Chemistry Chemistry Physics 17, 9148-9152 (2015).

概要: 光感受性BZ反応を用いて、その反応場を伝播する化学波の光パルスに対する応答を調べた。一次元的に化学波が伝播しているときに、反応場のある領域を一定の時間のみ光強度を変える。この光刺激により等速で伝播していた化学波が加速したり減速したりする。実験的にパルスを与えるタイミングをずらし、化学波のどの部分に光パルスを与えたときにもっとも加速・減速するかを調べた。また、Oregonatorをもとにした数値計算により、実験結果が再現できることも示した。 【北畑裕之(数値計算およびメカニズムに関する議論)】

2014

Akihiko Nakajima, Shuji Ishihara, Daisuke Imoto, and *Satoshi Sawai,
Rectified directional sensing in long-range cell migration,
Nature Communications 5, 5367/1-14 (2014).

概要: 細胞性粘菌の集合の合図は、細胞間で自己組織化する誘引物質の進行波が担っており、細胞は誘引物質の濃度がより高い方へ移動します。しかし、それでは、誘引物質の波が進行方向からやってきて去りゆく過程においては細胞が元居た場所へ戻っていってしまう「走化性パラドクス」が生じる。本研究では、微小流路内の高精度な層流制御技術と細胞内反応の定量的測定技術の開発、および理論モデルによる検証から、細胞性粘菌が誘引物質が経時的に増加する場合のみ、移動するための信号を細胞内で伝達することを明らかにした。誘因物質の濃度変化に適応的に応答する、局所的活性化と広域的な抑制機構に、刺激の変化への強い鋭敏性がある場合にこのような「整流作用」が生じることが示された。 【石原秀至(理論解析)】

*Satoshi Nakata, Tomoaki Ueda, Tatsuya Miyaji, Yui Matsuda, Yukiteru Katsumoto, Hiroyuki Kitahata, Takafumi Shimoaka, and Takeshi Hasegawa,
Transient reciprocating motion of a self-propelled object controlled by a molecular layer of a N‑stearoyl‑p‑nitroaniline: dependence on the temperature of an aqueous phase,
Journal of Physical Chemistry C 118, 14888-14893 (2014).

概要: 分子同志が強く相互作用する界面活性剤であるN-Stearoyl-p-nitroanilineのLangmuir膜を作り、そのΠ-A曲線を測定すると、低温では単調減少するのに対し、高温のときには逆N字型を描く。このようなLangmuir膜が存在するとき、水面に樟脳粒を浮かべたところ、低温の場合に限られた領域で往復運動することが明らかになった。逆に高温の場合には、そのような閉じ込めはおこらなかった。また、低温の場合に、あらかじめ樟脳粒でLangmuir膜上に曲線を描くとその曲線にそって樟脳粒が往復運動することも明らかになった。そのような現象のメカニズムの考察も行った。

*Nobuhiko J. Suematsu, Tomohiro Sasaki, Satoshi Nakata, and Hiroyuki Kitahata,
Quantitative estimation of the parameters for self-motion driven by difference in surface tension,
Langmuir 30, 8101-8108 (2014).

概要: 界面活性剤を周囲の水面に放出することにより周囲の水面に界面張力勾配を形成し動く系が自己駆動粒子のモデル系としてよく用いられる。その中でも特に典型的な水・樟脳系について、樟脳分子の溶けだし速度や実効的拡散係数、昇華率などを測定と理論解析から導出した。また、実際にどの程度の力が発生しているのかを測定し、それらの理論から求められる値と比較した。その結果、測定結果は矛盾なく理解され、樟脳粒子の運動の駆動力は10 μN程度であることがわかった。

*Nen Saito, Shuji Ishihara, and Kunihiko Kaneko,
Evolution of Genetic Redundancy : The Relevance of Complexity in Genotype-Phenotype Mapping,
New Journal of Physics 16, 063013/1-14 (2014).

概要: 生物の進化における揺らぎの役割を議論したもの。進化理論では、遺伝的な冗長性は集団レベルの適応度を下げるため、進化しにくいと考えられている。本論文では、遺伝型-表現型マッピングが複雑で揺らぎをもつ高自由度の進化モデルを導入し、ランダムネスを扱うためにレプリカ法を用いて解析を行った。自由度が高く複雑性が高い場合には遺伝的な冗長性が進化しうることを示した。

Keita Iida, Hiroyuki Kitahata, and *Masaharu Nagayama,
Theoretical study on the translation and rotation of an elliptic camphor particle,
Physica D 272, 39-50 (2014).

概要: 円からの摂動展開で楕円形の樟脳粒が短軸方向に動くことが明らかになった。また、濃度場と表面張力の関係が非線形な場合に、静止状態から並進運動への分岐がsupercriticalあるいはsubcriticalに条件になるを明らかにした。また、楕円形の樟脳粒が静止状態から回転運動への分岐を起こすことも明らかにし、その分岐点周りで運動方程式を得ることができた。さらには、数値計算により、楕円形の樟脳粒が運動する際に短軸方向に動くことが明らかになった。その際、分岐点周りの構造が円からの摂動展開により得られていることも明らかにした。

2013

Ryo Tanaka, Tomonori Nomoto, Taro Toyota, Hiroyuki Kitahata, and *Masanori Fujinami,
Delayed response of interfacial tension in propagating chemical waves of the Belousov-Zhabotinsky reaction without stirring,
The Journal of Physical Chemistry B 117, 13893–13898 (2013).

概要: 化学振動反応であるBelousov-Zhabotinsky反応溶液において、化学波が伝播するときの界面張力の変化をレーザー準弾性散乱により測定した。その結果、気液界面ではほぼ化学波の進行に伴う色の変化と一致して、界面張力が変化することがわかった。一方、油水界面における測定においては、化学波の進行よりも遅れて界面張力が変化することが明らかとなった。この現象について、界面活性をもつ鉄触媒の界面への吸着脱離の時定数を考えることにより議論した。 【豊田太郎(実験の提案、実験系の構築)、北畑裕之(実験結果に関する理論的解析)】



論文等 | 総説解説

2017

澤井哲, 石原秀至,
細胞内反応場のゆらぎと細胞運動,
パリティ 32(11), 22-25 (2017).

概要: ゆらぎや自己組織化現象が細胞機能にはたす役割が、顕微鏡測定の技術発展によって、定量的に解析できるようになってきた。一見ランダムにみえるアメーバ細胞の膜変形の一例をとりあげ、その背後にある法則とゆらぎの役割について紹介する。 【石原秀至(数値計算)】

*Alexander S. Mikhailov, Yuki Koyano, and Hiroyuki Kitahata,
Hydrodynamic effects in oscillatory active nematics,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 101013/1-9 (2017).

概要: 2次元系(細胞膜など)、3次元系(細胞質内など)においてアクティブタンパク質がエネルギーを用いて形態を変える際、周囲の流体を駆動する。タンパク質の種類によってその形状の変化はさまざまであるが、十分に遠い領域からは力双極子と見なすことができる。このような力双極子が多数ある系において、拡散の増強が見られることがこれまでに示されている。本論文は、これまでの結果に関するレビューを行うとともに、この双極子の向きがランダムではなくある特定の向きに配向しているときにどのようなことが起こるかについても議論した。そして、その場合には、循環流が起こることを明らかにした。 【北畑裕之:数値計算、解析計算】

北畑裕之,田中正信,
興奮場上の欠損まわりの螺旋波:効果的な除細動法を展望して,
生物物理 57, 191-195 (2017).

概要: 心臓組織における螺旋波は疾患に関連するため、広く研究されている。一様な興奮系での螺旋波は古くからその除去法に関する研究が多く行われてきたが、近年、欠損へのまとわりつきが重要であることが明らかになってきた。そこで、欠損と螺旋波との拡散的相互作用に着目した螺旋波の除去法についての研究を紹介する。 【北畑裕之:執筆、文章のとりまとめ】

澤井 哲,
時空間的なシグナルの検出とは何か-這いまわる細胞の走化性を例に,
実験医学増刊『生命科学で使えるはじめての数理モデルとシミュレーション』(鈴木 貴、久保田浩行 編)羊土社 35(5), 195-199 (2017).

概要: 這いまわる細胞の駆動源の1つは, アクチンの樹状フィラメント形成によって膜を押し出す過程にある. 走化性における細胞の一方向的な動きは, 細胞の前側を決める形質膜のこうした箇所(先導端leading edge)が, いかにして細胞全体でただ1つ, かつ正確にリガンドの高濃度側に決定されるかという, 「パターン形成」の問題として捉えることができる. 本稿では, 定量的な実験解析と数理モデルから浮かび上がっている描像について紹介する.

2016

Akihiko Nakajima, Satoshi Sawai,
Dissecting Spatial and Temporal Sensing in Dictyostelium Chemotaxis Using a Wave Gradient Generator,
Chemotaxis: Methods and Protocols 2nd Ed. (ed. Dale Hereld, Tian Jin) Methods in Molecular Biology 1407, 107-122 (2016).

中島昭彦, 石原秀至, 澤井哲,
動く細胞が読み取る時間と空間:走化性のパラドクスと整流作用,
生物物理学会誌 56(2), 98-101 (2016).

*北畑裕之,
振動・拡散と数理モデル,
数理科学 631, 8-13 (2016).

概要: 現象の数理モデルを考える際に最もよくあらわれる振動および拡散について、現象とのつながりを考慮しつつ解説する。特に振動としては、リミットサイクル振動子について具体例をあげつつ解説し、拡散現象については、その発展として反応拡散方程式ンいついて概説する。 【北畑裕之(とりまとめ)】

2015

*杉村薫,石原秀至,
組織応力の異方性が細胞の六角格子化を促進する,
生物物理 55, 210-211 (2015).

概要: 個体発生におけるでは組織の変形が伴うが、その変形の背後にある力を出すのは細胞自身である。この力をin vivo組織内で見積もることは、未だ難しい。我々は細胞の形態から力を、ベイズ統計に基づく逆問題の定式化によって推定する手法を開発した。またショウジョウバエ上皮である翅について適用し、翅は発生中に外からのひっぱりによる力をうけ、力場が異方的であることを見出した。さらに、この異方的な力が、細胞配置を六角形状へと促進することを、実験や数値シミュレーションから示した。

*石原秀至,杉村薫,
ベイズ推定でせまる形態形成の力学,
医学のあゆみ 253, 1135-1140 (2015).

概要: 個体発生過程において,組織は時空間的に制御された変形を繰り返すことで最終的な形態を獲得する.この組織形態形成を理解するためには,力を出す主体としての細胞の挙動を観察し,細胞内の分子の働きを組織全体の形状変化を促進する機械的な力に結びつける必要がある.しかし,現状では生体組織における力の測定手法は確立されていない.そこで著者らは,細胞に作用する力の釣り合い方程式を考慮し,ベイズ統計学の枠組みを適用することで,細胞の画像データから目にみえない“力”を推定する手法を開発した.この力推定法は組織全体にわたって単一細胞スケールの解像度で力を定量できるので,化学情報(分子の活性や細胞内局在)と物理情報(力,応力)を直接比較することを可能にする.本稿では,力推定法の“データに潜む重要情報を引き出す技術”というデータ科学的な側面に重きをおいて,その原理と妥当性の検証について説明する.

*Satoshi Nakata, Masaharu Nagayama, Hiroyuki Kitahata, Nobuhiko J. Suematsu, and Takeshi Hasegawa,
Physicochemical design and analysis of self-propelled objects that are characteristically sensitive to interfacial environments,
Physical Chemistry Chemical Physics 17, 10326-10338 (2015).

概要: 樟脳粒を水に浮かべると樟脳粒から樟脳分子が水面に溶けだし、表面張力を下げる。このようにして生成された表面張力勾配によって、樟脳粒は水面を自発的に運動することができる。これまで、樟脳粒の形状や浮かべる水面の形状を変えたり、樟脳の代わりに昇華性を持ち、界面張力を下げる物質を使い、さらにその物質との化学反応を考えることなどで、さまざまな自発運動の様子が観察されることを報告してきた。本論文はそのような内容のレビューペーパーである。【北畑裕之(対流との関係、モデリングに関する記述、全般的な議論)】

*石原秀至, 澤井哲,
反応-拡散-駆動系として理解する細胞の形態変化,
日本物理学会誌 70, 25-30 (2015).

概要: 生きた細胞は非平衡系の最たるものであるが、系の複雑さゆえにその動態の特徴付けが難しい。それでも近年、細胞内の化学反応や輸送が直接観測できるようになったことで、マクロ非平衡系の秩序形成に共通する振る舞いが見えてきた。 本稿では、その具体例として、アメーバ状の細胞が示す複雑な変形ダイナミクスが、細 胞内の化学反応と拡散によって出現する動的なマクロ構造として理解できることを紹介する。 【澤井哲:共同研究者(実験)】



国際会議発表

2017

Invited

*Shuji Ishihara,
Continuum model for epithelial tissue,
Modeling and Numerical Analysis of Nonlinear Phenomena: Fluid Dynamics, Motion of Interfaces, and Cell Biology (Dec. 6-8, 2017), Tokyo, Japan.

*Hiroyuki Kitahata,
Hydrodynamic Coupling between Active Matters and Pattern Formation,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23, 2017), Sendai, Japan.

Poster

*Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, and Alexander S. Mikhailov,
Diffusion and Drift in Cytoplasm Induced by Active Proteins,
International symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23), Sendai, Japan.

*Shuji Ishihara, Philippe Marcq, and Kaoru Sugimura,
From cells to tissue: a continuum model of epithelial tissue,
nternational Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23, 2017), Sendai, Japan.

Oral (contributed)

*Tatsunari Sakurai,
Growth-diffusion-chemotaxis model for deposition pattern of Escherichia coli,
Equadiff 2017 (Jul. 24-28, 2017), Bratislava, Slovakia.

Invited

Satoshi Sawai,
Spatio-temporal constraints on cellular sensing: what it means for universal biology,
International Symposium of the origin of life – synergy among the RNA, protein and lipid worlds (May 29-30, 2017), Tokyo, Japan.

Shuji Ishihara,
A continuum model for epithelial tissue mechanics,
Structured Soft Interfaces: Caught Between Multi-Scale Simulation and Application (Jan. 23-27, 2017), Leiden, Netherlands.


2016

Invited

*Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous Motion of a Droplet under Nonequilibrium Condition,
17th RIES-Hokudai International Symposium on ”柔” (Dec. 13-14, 2016), Sapporo, Japan.

Shuji Ishihara,
Continuum model for passive and active deformation of epithelial tissue,
Current and Future Perspectives in Active Matter (Nov. 28-29, 2016), Tokyo, Japan.

*Hiroyuki Kitahata, Yuki Koyano, and Alexander S. Mikhailov,
Hydrodynamic collective effects of active proteins in biological membranes,
International Workshop on Hydrodynamic Flows in/of Cells (Nov. 24-25, 2016), ToKyo, Japan.

Poster

Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, and Alexander S. Mikhailov,
Hydrodynamic collective effect of active proteins depending on orientational order,
International Workshop on Hydrodynamic Flows in/of Cells (Nov. 24-25, 2016), Tokyo, Japan.

*Yuki Koyano, Ei Shin-Ichiro, Hiroyuki Kitahata, and Masaharu Nagayama,
Shape-dependent motion of interacting camphor particles,
Interdisciplinary Applications of Nonlinear Science (Nov. 3-6, 2016), Kagoshima, Japan.

Invited

*Hiroyuki Kitahata,
Droplet motion coupled with pattern formation inside it,
Interdisciplinary applications of nonlinear science (Nov. 3-6, 2016), Kagoshima, Japan.

*Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous motion driven by interfacial tension gradient,
Current and Future Perspectives in Active Matter (Oct. 28-29, 2016), Tokyo, Japan.

*Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous motion driven by surface tension gradient,
International Conference: Patterns and Waves 2016 (Aug. 1-5, 2016), Sapporo, Japan.

Poster

*Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and Hiroyuki Kitahata,
Rotational and Oscillatory Motion in a Two-dimensional Axisymmetric Self-propelled System,
International Conference: Patterns and Waves 2016 (Aug. 1-5, 2016), Sapporo, Japan.

Invited

*Satoshi Sawai,
Microfluidic analysis of collective cell migration during contact-following in Dictyostelium,
STATPhys26, the 26th IUPAP International conference on Statistical Physics (Jul. 18-22, 2016), Lyon, France.

Poster

*Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and Hiroyuki Kitahata,
General criteria for determining rotation or oscillation in a two-dimensional axisymmetric system,
Gordon Research Conference: Oscillations & Dynamic Instabilities in Chemical Systems (Jul. 17-22, 2016), Stowe, USA.

*Hiroyuki Kitahata, Tomohiro Sasaki, Nobuhiko J. Suematsu, Tatsunari Sakurai,
Spontaneous recurrence of deposition and dissolution of a solid layer on a solution surface,
Gordon Research Conference: Oscillations & Dynamic Instabilities in Chemical Systems (Jul. 17-22, 2016), Stowe, USA.

*Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and Hiroyuki Kitahata,
General criteria for determining rotation or oscillation in a two-dimensional axisymmetric system,
Gordon Research Seminar: Oscillations & Dynamic Instabilities in Chemical Systems (Jul. 16-17, 2016), Stowe, USA.

Oral (contributed)

*Yuki Koyano and Hiroyuki Kitahata,
Motion of a camphor particle in a two-dimensional circular region,
International Workshop New Frontiers in Nonlinear Sciences (Mar. 6-8, 2016), Niseko, Japan.

*Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous recurrence of deposition and dissolution of a solid layer on a solution surface,
International Workshop New Frontiers in Nonlinear Sciences (Mar. 6-8, 2016), Niseko, Japan.


2015

Oral (contributed)

*Hiroyuki Kitahata,
Motion of a Belousov-Zhabotinsky reaction droplet coupled with pattern formation,
Pacifichem 2015 (Dec. 15-20, 2015), Honolulu, USA.

Invited

*Shuji Ishihara,
Modeling alignment of cilia in apical membrane of multi-ciliated cell,
Commemorative Symposium for the 31st International Prize for Biology (Dec. 5-6, 2015), Kyoto, Japan.

Oral (contributed)

*Akihiko Nakajima and *Shuji Ishihara,
Dissecting temporal and spatial information for direction sensing in migrating cells,
International Conference of Systems Biology 2015 (Nov. 23-24, 2015), Singapore.

*Shuji Ishihara, Akihiko Nakajima, Satoshi Sawai,
Cell migration in periodic signal wave,
Physics of Cells and Tissues 2015 (Sep. 30- Oct. 2, 2015), Heidelberg, German.

*Yuki Koyano and Hiroyuki Kitahata,
Rotation and Oscillation of a Self-Propelled particle in a Two-Dimensional Axisymmetric System,
XXXV Dynamics Days Europe 2015 (Sep. 6-10, 2015), Exeter, United Kingdom.

*Hiroyuki Kitahata, Keita Iida, and Masaharu Nagayama,
Spontaneous motion of an elliptic particles induced by surface tension gradient,
XXXV Dynamics Days Europe 2015 (Sep. 6-10, 2015), Exeter, United Kingdom.

Invited

*Satoshi Sawai,
Chemotaxis and Contact-Mediated Ordering of Directionality in Aggregating Cells,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

*Hiroyuki Kitahata,
Modeling for droplet motion driven by interfacial tension gradient,
The 8th International Congress on Industrial and Applied Mathematics (Aug. 10-14, 2015), Beijing, China.

Poster

*Hiroyuki Kitahata,
Droplet motion coupled with chemical pattern formation,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

*Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and Hiroyuki Kitahata,
Rotation and Oscillation of a Self-Propelled particle in a Two-Dimensional Axisymmetric System,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

*Shuji Ishihara, Akihiko Nakajima, and Satoshi Sawai,
How cells move up a signal wave?,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

*Daisuke Taniguchi, Takayuki Torisawa, Kazuhiro Oiwa, Shuji Ishihara,
Formation and Rupture of a Contractile Network in a Motorized Cytoskeletal System,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

Oral (contributed)

*Tatsunari Sakurai,
Propagation and aggregation of E. coli pattern,
Symposium “Complexity and Synergetics” (Jun. 8-11, 2015), Hannover, Germany.

Invited

*Hiroyuki Kitahata,
Droplet motion coupled with pattern formation in it,
EMN Meeting on Droplet (May 8-11, 2015), Phuket, Thailand.

*Satoshi Sawai,
Collective movement of ameboid cells driven by attachment-dependent ordering of directionality,
Focus Meeting of the Kyoto Winter School for Statistical Mechanics (Feb. 16-17, 2015), Kyoto, Japan.

*Satoshi sawai,
Integration of space and time information in long-range cell migration,
The 59th Annual Biophysical Society Meeting Symposium “Emergent Properties and Collective Behaviors of Complex Systems” (Feb. 7-11, 2015), Baltimore Convention Center, Baltimore MD.


2014

Invited

*Satoshi sawai,
Collective migration and rectified directional sensing,
Mechano-Biology Institute-Japan Joint Symposium on “Mechanobiology of Development and Multicellular Dynamics” (Dec. 2-4, 2014), National University of Singapore.

*Satoshi Sawai,
Integration of temporal and spatial information in eukaryotic gradient sensing,
4th Symposium on Artificial Life and Biomimetic Functional Materials (Nov. 28, 2014), Tokyo, Japan.

Oral (contributed)

*Yuki Koyano, and Hiroyuki Kitahata,
Bifurcation Analysis on Motion of a Self-Propelled Particle Confined in a Finite Region,
3rd Japanese-German Workshop “Emerging Phenomena in Spatial Patterns” (Sep. 22, 2014), Magdeburg, Germany.

*Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous Motion Driven by Surface Tension Gradient,
3rd Japanese-German Workshop “Emerging Phenomena in Spatial Patterns” (Sep. 22, 2014), Magdeburg, Germany.

Poster

*Tomohiro Sasaki, Hiroyuki Kitahata, and Tatsunari Sakurai,
Repetitive generation and dissolution of camphor layer at solution surface,
Gordon Research Conference: Oscillations and Dynamic Instabilities in Chemical Systems (Jul. 13-18, 2014), Girona, Spain.

*Hiroyuki Kitahata,
Droplet motion coupled with pattern formation,
Gordon Research Conference: Oscillations and Dynamic Instabilities in Chemical Systems (Jul. 13-18, 2014), Girona, Spain.

*Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, Tatsunari Sakurai,
Motion of a Self-driven Particle confined in a Finite Region,
Gordon Research Conference: Oscillations and Dynamic Instabilities in Chemical Systems (Jul. 13-18, 2014), Girona, Spain.

Oral (contributed)

*Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous motion driven by surface tension gradient,
18th Harz Seminar “Pattern Formation in Chemistry and Biophysics” (Feb. 16-18, 2014), Hahnenklee, Germany.

*Yuki Koyano and Hiroyuki Kitahata,
Bifurcation-analysis of self-driven particles in a 1-D finite region,
18th Harz Seminar “Pattern Formation in Chemistry and Biophysics” (Feb. 16-18, 2014), Hahnenklee, Germany.

Poster

Hiroyuki Kitahata,Keita Iida,Masaharu Nagayama,
Surface-tension-induced motion of an elliptic camphor particle,
XXXIIII Dynamics Days US (Jan. 2-5, 2014), Atlanta, USA.

*Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, Tatsunari Sakurai,
Bifurcation Analysis on Self-driven Particle Motion in a 1-D Finite Region,
XXXIIII Dynamics Days US (Jan. 2-5, 2014), Atlanta, USA.


2013

Poster

*Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, and Tatsunari Sakurai,
Bifurcation Analysis on Self-driven Particle Motion in a 1-D Finite Region,
International Conference on Mathematical Modeling and Applications (ICMMA 2013) (Nov. 26-28, 2013), Tokyo, Japan.

Hiroyuki Kitahata, Yutaka Sumino, Yuya Shinohara, Norifumi L. Yamada, Hideki Seto,
Formation of a Multiscale Aggregate Structure through Spontaneous Blebbing of an Interface,
27th Conference of European Colloid and Interface Society (Sep. 1-6, 2013), Sofia, Bulgaria.




著書

2018

“Complexity and Synergetics” S.C. Müller, P.J. Plath, G. Radons, A. Fuchs (ed.)
“Propagation and Aggregation of Motile Cells of Escherichia coli Pattern” Tatsunari Sakurai, Tohru Tsujikawa and Daisuke Umeno
Springer (2018), 227-237, ISBN : 978-3-319-64334-2

概要:大腸菌の遺伝子レベルのミクロな現象から、細胞個々の動きと細胞間の相互作用、そして集合した時のマクロな振舞など、各階層で観測される秩序形成は良く研究されている。また大腸菌の マクロな秩序形成は非平衡系におけるパターン形成の一例として知られている。本論文では、大腸菌のマクロな秩序形成を理解するためのモデルを提案し、それを用いた数値結果に関して議論している。

2015

「高校生のための東大授業ライブ 学問からの挑戦」東京大学教養学部編(編)
“いきいきとした状態の科学-細胞性粘菌でさぐる自己組織化のメカニズム” 澤井 哲
東京大学出版会(2015), 131-149, ISBN : 978-4-13-003346-6

概要:アメーバ界の代表選手,細胞性粘菌は,土壌中でバクテリアやカビなどを栄養源にして増殖する単細胞のアメーバである。この生き物の面白いところは、飢餓状態に陥ると、何万個の細胞が集まることによって,子実体という柄の上に胞子をのせた形をした多細胞体制をつくることである.細胞性粘菌のアメーバ状の動きや,細胞集合は,自己組織化現象を理解することに役に立っている.これは,自然現象から生命のダイナミクスにいたるまで,下の階層から上の階層の秩序が形成される際の特徴である.私たちが進めている研究の一端を紹介する.

2014

「画像解析手とり足とりガイド」青木一洋, 小林徹也(編)
“動く細胞の定量的動態解析” 澤井哲, 井元大輔, 福神史人, 中島昭彦
羊土社(2014), ISBN : 978-4758108157

概要:ライブイメージングによって捉えた細胞の振る舞いを定量的に解析することから、動く細胞の典型的な振る舞いを見せる細胞性粘菌を題材に、細胞内分子局在、FRETシグナルや細胞の移動の動態を簡便かつ汎用的に解析する方法に付いて述べる。

「生体の科学65巻5号」
“細胞レベルと集団レベルの振動性” 澤井 哲
医学書院(2014), 474-475

概要:心臓や脳といった人間の根幹にかかわるどの器官をとってみても,それらをバラバラにしてしまっては,組織や器官レベルの機能性の多くは失われてしまう。細胞のように自律的な要素が組み合わさった結果,全体レベルの新しい性質がいかにして発現するかは,生命に限らず,分子から社会に至るまでに共通した話題である。ことに,細胞から組織という階層間においては集団性の操作と制御は依然として経験的な知見にとどまっていることが多く,未解決の基礎的問題が潜んでいる。振動現象を例に,細胞から細胞集団の秩序がいかに出現するか,その最も基礎的な部分の理解について紹介する。



特許

2016

澤井 哲,
「流体流制御装置及び流体流制御方法」
2016-087745(特願・日本)

澤井 哲,
「流体流制御装置及び流体流制御方法」
PCT/JP2017/015594(外国)

新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」