業績リスト

A03公募(2014-15) 車 兪澈

論文等 | 原著論文

2015

*Yutetsu Kuruma and Takuya Ueda,
The PURE system for the cell-free synthesis of membrane proteins,
Nature Protocols 10, 1328-1344 (2015).

概要: 無細胞タンパク質合成系はタンパク質合成のための試験管内ツールである。この無細胞系にリポソームなどの人工的な膜画分を加えることで、複雑な膜タンパク質複合体をも合成することができる。われわれは再構築型の無細胞系PURE systemを用いた膜タンパク質合成法と、その定量法、膜局在効率測定法、膜内配向性評価法、膜内複合体形成評価法についての実験的手順を示した。さらに、一例として、無細胞系で合成したATP合成酵素の活性評価法とその結果についても示した。この方法は、膜タンパク質の迅速な入手と詳細な解析を可能にするものであり、これまでの生きた細胞を用いた実験系による、膜タンパク質精製や再構築化のリスクを克服する利点を持つものである。

2014

Hideaki Matsubayashi, Yutetsu Kuruma, and Takuya Ueda,
Cell-Free Synthesis of SecYEG Translocon as the Fundamental Protein Transport Machinery,
Origins of Life and Evolution of Biospheres 44, 331-334 (2014).

概要: 細胞膜は単に細胞質の入れ物という役割の他に、細胞の生命維持に欠かせない多くの生化学的な機能をもっている。そのような細胞膜機能のほとんどは膜タンパク質がになっており、またそれらは膜挿入マシナリーであるSecYEGトランスロコンを介して脂質二重膜に埋め込まれる。我々は、このSecYEGを試験管内で人工的に合成することで、細胞膜の機能化のプロセスについて考察した。

Hideaki Matsubayashi, Yutetsu Kuruma, and Takuya Ueda,
In vitro synthesis of the E. coli Sec Translocon from DNA,
Angewandte Chemie International Edition 53, 7535-7538 (2014).

概要: 生きた細胞の仕組みを詳細に理解するために、DNA、タンパク質、脂質などの生体分子を組み合わせて、人工細胞を作製する研究が注目されている。しかし、それら細胞内分子を包み込む細胞膜の作製は、細胞膜上で働く膜タンパク質をうまく合成するための有効な方法がなかったため非常に難しく、これまで人工細胞の実現を妨げていた。この問題に対し筆者らは、東京大学上田卓也教授の開発した試験管内タンパク質合成システム(PURE system)を用いて、膜タンパク質の合成に必須な膜上の分子装置(Sec Translocon)を作製し、細胞と同じプロセスで膜タンパク質を合成することに成功した。この成果は、自律的に膜タンパク質を合成できる人工細胞の構築につながるものである。

*Yoshihiro Shimizu, Yutetsu Kuruma, Takashi Kanamori, Takuya Ueda ,
The PURE system for protein production,
Methods in Molecular Biology 1118, 275-284 (2014).

概要: 分子生物学や生化学の分野では、精製タンパク質の入手はそのタンパク質の生理学的意義や機能を理解する上で重要である。近年の無細胞系の発展は、試験管内での迅速なパンパク室合成を可能にしてきている。PURE systemと呼ばれる再構築型の無細胞系はその発展性・利便性において高度に優れている。今回、PURE systemを使ったリコンビナントタンパク質の合成と生化学的・分子生物学的解析について報告する。



論文等 | 総説解説

2016

*車 兪澈、上田卓也,
クローズアップ実験法:PUREシステムを用いた膜タンパク質の無細胞合成,
実験医学 34(3), 471-476 (2016).

概要: 無細胞タンパク質合成系(無細胞系)は試験管内で転写・翻訳反応をおこない, 人工的にタンパク質を合成する生化学ツールである. この反応系に, リポソームと呼ばれる脂質膜小胞を加えることで, 膜タンパク質を脂質膜上に合成することが可能である. さらに複数種の膜タンパク質を同時に合成することで, Secトランスロコンや, ATP合成酵素などのような膜上で高次構造を形成するタンパク質複合体の合成も可能である.今回, 我々はPUREシステムとリポソームを組み合わせた膜タンパク質合成法と, 合成産物の定量, 膜局在効率評価, 膜内配向性評価, 複合体形成評価の手法について紹介する.



論文等 | 会議録

2015

*Yutetsu Kuruma,
Creation of Simple Biochemical Systems to Study Early Cellular Life,
Origins of Life and Evolution of Biospheres 45, 359-360 (2015).

概要: リン脂質合成代謝に関する酵素群を構築することにより、内部で脂質分子を合成するモデル細胞、ミニマルセルを構築した。この結果は、共通祖先細胞を構成的に理解するための有力なアプローチであるだけではなく、人工細胞構築にも寄与るすものである。

Pier Luigi Luisi, and Yutetsu Kuruma,
Open Questions on the Origin of Life (OQOL)-Introduction to the Special Issue,
Origins of Life and Evolution of Biospheres 44, 267-268 (2015).

概要: 2014年7月京都高等研にてOpen Question of Origins of Life (OQOL)ワークショップを行った。OQOLでは、生命の起源研究における以下のような未解決問題について議論した。 ・前生物学的環境において、いかにして意味のある配列を持ったペプチドやRNA鎖が形成されたか? ・前生物学的環境に存在していたと考えらるれる10種のアミノ酸のみから、いかにして最初の生化学的な代謝が形成されたのか? ・熱力学に支配された化学からいかにして触媒を必要とするKinaticな化学へと変化して行ったのか? ・RNAワールド仮説がどのように生命起源の謎に答えてきたか?



国際会議発表

2015

Invited

*Yutetsu Kuruma,
Construction of Self-Reproducing Minimal Cell,
International WorkShop on Challenge to Synthesizing Life (Aug. 25-26, 2015), Hakone, Japan.

Poster

*Yutetsu Kuruma,
Fatty acid synthesis inside giant unilamellar vesicle -Toward the construction of self-reproducing protocell-,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

Invited

*Yutetsu Kuruma,
Construction of Self-reproducing Minimal Cell,
Sattelite Workshop “The 1st Workshop on Synthetic Natural Systems”, in ECAL2015 (Jul. 20-24, 2015), York, UK.

Oral (contributed)

*Yutetsu Kuruma,
Reconstruction of cell membrane function,
RNA, Peptides, Vesicles and Exoplanets (Feb. 26-27, 2015), Boston, USA.

Poster

*Hideaki Matsubayashi, Yutetesu Kuruma, Takuya Ueda,
Cell-free synthesis of Sec translocon on liposome membrane,
Biophysical Society 59th Annual Meeting (Feb. 7-11, 2015), Maryland, USA.

*Yutetsu Kuruma,
Construction of artificial cell membrane for the study of the origin and evolution of life,
The 3rd ELSI (Earth-Life Science Institute) International Symposium (Jan. 13-15, 2015), Tokyo, Japan.


2014

Poster

*Yutetsu Kuruma, Hideaki Matsubayashi, and Takuya Ueda,
In Vitro Reconstruction of Functional Membrane,
ALIFE14 (Jul. 30 – Aug. 2, 2014), New York, USA.

Oral (contributed)

*Yutetsu Kuruma,
In vitro reconstruction of functional cell membrane,
Satellite workshop in ALIFE14, What can Synthetic Biology offer to (Embodied) Artificial Intelligence? (Jul. 30, 2014), New York, USA.

Poster

*Hideaki Matsubayashi, Yutetsu Kuruma, Takuya Ueda,
In Vitro Synthesis of Sec Translocon from DNA,
Open Questions on the Origin of Life 2014 (Jul. 12-13, 2014), Nara, Japan.

Oral (contributed)

*Yutetsu Kuruma, Hideaki Matsubayashi, Pasquale Stano, Takuya Ueda, Pier L. Luisi, Daisuke Kiga,
Creation a possible living organism that might exist in an early earth condition,
ORIGINS2014 (Jul. 6-11, 2014), Nara, Japan.




著書

2015

Open Questions on the Origin of Life (OQOL)—Introduction to the Special Issue
Yutetsu Kuruma and P. L. Luisi(編)
Origins of Life and Evolution of Biospheres(2015)


2014

「Artificial Life 14」
“In Vitro Reconstruction of Functional Membrane”
Yutetsu Kuruma, Hideaki Matsubayashi, and Takuya Ueda
The MIT Press(2014), 963-964.

概要:膜小胞は細胞外殻として人工細胞構築のために広く用いられている。しかし、脂質と膜タンパク質から、生化学的機能を持った細胞膜を再構築することは難しく、人工細胞構築の実現化を妨げる要因の一つとなっている。これに対し筆者らは、膜小胞存在下において膜タンパク質を合成することで、合成と同時に自発的に膜挿入する性質を利用し、細胞生存維持に必須とされる種々の膜タンパク質の合成を行った。中でも、タンパク質が脂質膜に組み込まれる際、そのゲートとなる働きを担うSecトランスロコンや、エネルギー生産に必須なATP合成酵素の人工合成に成功している。このような、構成的なアプローチにより、自律性を持った人工細胞構築の可能性について考えていく。
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」