業績リスト

A03公募(2014-15) 宗行 英朗

論文等 | 原著論文

2015

Shoichi Toyabe and Eiro Muneyuki,
Single molecule thermodynamics of ATP synthesis by F1-ATPase,
New Journal of Physics 17, 015008/1-7 (2015).

概要: FoF1-ATPaseはほとんどすべての細胞に於いてATPを合成する役割を果たす.その中心となるサブ複合体であるF1モーターは可逆的な化学反応とγサブユニットの回転運動の共役をおこなう.本研究では強い合成方向の外部トルクを印可して,平衡から離れた合成反応が行われる状況でも,モーター内での散逸が非常に低いことを示した. 【沙川 貴大、佐野雅己、佐々真一、佐野研川口、宗行研上野(議論)】

2014

Hiroshi Ueno, Yoshihiro Minagawa, Mayu Hara, Suhaila Rahman, Ichiro Yamato, Eiro Muneyuki, Hiroyuki Noji, Takeshi Murata, *Ryota Iino,
Torque Generation of Enterococcus hirae V-ATPase,
The Journal of Biology Chemistry 289, 31212-31223 (2014).

概要: FoF1-ATP合成酵素と類似した機能を持つVoV1-ATPaseについて大腸菌での発現系を構築して一分子回転観察を行い,V1-ATPaseの回転と比較した.その結果,V1-ATPaseの回転に完結的に見られた不安定な回転はVoV1-ATPaseにおいては見られず,Vo部分の存在が構造全体を安定化していることが示唆された.このVoV1-ATPaseはナトリウムイオンを輸送するものであることから,イオン輸送と回転の共役についての研究の発展が見込まれる. 【宗行英朗(実験の支援と論文のチェック)】

Yasuaki Komuro, Suyong Re, Chigusa Kobayashi, Eiro Muneyuki, and *Yuji Sugita,
CHARMM Force-Fields with Modified Polyphosphate Parameters Allow Stable Simulation of the ATP-Bound Structure of Ca2+-ATPase,
Journal of Chemical Theory and Computation 10, 4133−4142 (2014).

概要: 分子動力学計算で用いるATPの力場をメチル三リン酸に対する量子論的計算にもとづき作成した.この新しいパラメーターをCa-ATPaseを含む5種類の蛋白に結合したATPに用い,それぞれに従来の力場より安定な結果を得た.従来のパラメーターでは伸びた状態が主に見られたが新しいパラメーターでは寄り広い範囲のコンフォメーションのサンプリングができ,PDBに見られる多様なATPの結合状態と符号した.この新しいパラメーターはATPを利用する多くの蛋白の研究に役立つと考えられる. 【宗行英朗(研究の支援)】



論文等 | 総説解説

2014

上野博史,鳥谷部祥一,宗行英朗,
一分子生物学(原田 慶恵 石渡 信一 編 化学同人)第7章FoF1モーター,
DOJIN BIOSCIENCE SERIES 17, 88-101 (2014).

概要: F1-ATPaseが回転分子モーターであることの決定的な証明は1997年の野地,安田らによる一分子観察によってなされ,それ以来F1-ATPaseはF1モーターとして,一分子観察,一分子操作の手法を駆使して,その働きが徹底的に調べ続けられてきた.一方,FoF1-ATP合成酵素についても,そのATP駆動の回転の観察がなされ,本来の膜をへだてたプロトンの電気化学ポテンシャル差による回転の観察に向けてたゆまない努力が続けられている.本稿では発展途中のFoF1モーターの観察系について現在の研究の流れを概観した後,F1モーターに対する物理学的な解析の手法とその結果について述べる.

鳥谷部祥一,宗行英朗,
1分子ナノバイオ計測 :分子から生命システムを探る革新的技術 (野地博行 編 化学同人)第10章 分子モーターの1分子実験熱力学,
化学フロンティア 23, 131-138 (2014).

概要: ATP合成酵素の一部分で,回転分子モーターであるF1-ATPaseに対して我々が行ってきた一分子エネルギー論の研究について述べる.本章では簡単にその回転運動のスケッチをしてから我々がどのようなことに疑問を持ち,それに応えるために最近の一分子ナノバイオの実験技術と非平衡物理の理論がどのように役立ってきたかを解説する.



国際会議発表

2015

Poster

*Eiro Muneyuki, Mana Tanaka, Tomohiro Kawakami, Hiroshi Ueno, Yohei Nakayama and Shoichi Toyabe,
Rotation of β E190D Mutant of F1-ATPase,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2015 (SFS2015) (Aug. 20-23, 2015), Kyoto, Japan.

新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」