業績リスト

A03公募(2016-17) 内田 就也

論文等 | 原著論文

2018

*Takanobu A. Katoh, Koji Ikegami, *Nariya Uchida, Toshihito Iwase, Daisuke Nakane, Tomoko Masaike, Mitsutoshi Setou, *Takayuki Nishizaka,
Three-dimensional tracking of microbeads attached to the tip of single isolated tracheal cilia beating under external load,
Scientific Reports 8, 15562 (2018).

概要: 繊毛のビーティング運動を定量的に調べるため、単離してガラス基板上に固定したマウス気管繊毛の先端に蛍光ビーズを接着し、その運動を3次元的にトラッキングした。繊毛は有向打と回復打において高さの異なる周期的な軌道を描くことが分かった。流体力学計算により繊毛に働く抵抗力および発生する流束を解析した結果、1周期で積分した流束は周囲の流体の粘性率によらずほぼ一定値を維持することが示された。また光ツイーザーによって先端を固定した繊毛は軸方向に振動を示すことが分かった。 【西坂崇之:研究計画の統括、内田就也:理論解析】

Armando Maestro, Nicolas Bruot, Jurij Kotar, Nariya Uchida, Ramin Golestanian, *Pietro Cicuta,
Control of synchronization in models of hydrodynamically coupled motile cilia,
Communications Physics 1, 28/1-8 (2018).

概要: 繊毛の協調運動のモデルとして、光ツイーザーによって駆動されるコロイド粒子系の流体力学相互作用による同期現象を調べた。駆動力を位相の周期関数として変調させ、変調振幅の大きさ、粒子間距離、粒子の基盤からの高さを変化させることで同期パターンをコントロールできることを示した。実験、数値シミュレーション、理論解析の3種類の方法で得られた結果は定量的な一致を示した。 【内田就也:理論解析】

2016

Yoshiaki Kinosita, *Nariya Uchida, Daisuke Nakane and *Takayuki Nishizaka,
Direct observation of rotation and steps of the archaellum in the swimming halophilic archaeon Halobacterium salinarum,
Nature Microbiology 1, 16148/1-9 (2016).

概要: 古細菌はアーケラム(古細菌べん毛)とよばれる回転するフィラメントを用いて遊泳する。その機構を理解するため、われわれはモデル生物であるハロバクテリウム・サリナラムに注目した。量子ドットの3次元トラッキングによって、古細菌べん毛の左ねじ螺旋運動の詳細な可視化を可能とした。全反射照明蛍光顕微鏡と組み合わせた先進的な解析手法(クロス・キモグラフィー)が開発され、回転率 23±5 Hzで回転する右ねじ螺旋構造が明らかになった。これらの構造的、運動学的パラメータを用いた流体力学モデルによって、遊泳および歳差運動を数値的に再現し、モータートルクを 50 pN・nm と評価した。最後にテザードセル法によって、約36°または 60°間隔での回転の一時停止を観察した。これは1個の ATP を消費する1つのステップであると推測され、このことからモーターのエネルギー効率は 6〜10% と計算された。 【西坂崇之(研究計画全般の統括と実験の企画、実行)】

Yi-Teng Hsiao, Kuan-Ting Wu, Nariya Uchida, and *Wei-Yen Woon,
Impurity-tuned non-equilibrium phase transition in a bacterial carpet,
Applied Physics Letters 108, 183701/1-5 (2016).

概要: バクテリアカーペットが示す非平衡相転移における不純物効果を光ツイーザー・マイクロビーズアッセイによって調べた。V. alginolytics の変異株 (NMB136)からなるカーペット上の集団的な流れは臨界 Na+ 濃度において急激な増加(2次相転移的な挙動)を示す。不純物として野生株(VIO5)を最大 50% まで混入し、相転移挙動の変化を調べた。低濃度(25% 以下)では臨界 Na+濃度が上方にシフトし、高濃度では相転移曲線の鈍化と秩序相における流れ強度の減少が見られた。



論文等 | 総説解説

2017

*Nariya Uchida, Ramin Golestanian, Rachel R. Bennett,
Synchronization and Collective Dynamics of Flagella and Cilia as Hydrodynamically Coupled Oscillators,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 101007/1-8 (2017).

概要: べん毛や繊毛の協同運動は微生物の遊泳や多細胞生物の体内物質輸送を促進する。われわれはミニマルモデルを用いてべん毛や繊毛の同期と集団運動における流体力学相互作用の役割を考察した。バクテリアべん毛の集団同期はバクテリアカーペットのモデルを用いて調べられる。繊毛と真核生物べん毛は駆動力の周期的変動によって特徴付けられ、さまざまな2体同期やメタクロナル波のパターンを示す。遊泳体のべん毛は遊泳体に働く粘性抵抗力のバランスを介することによっても同期する。またこれらの系に関する最近の実験的研究についても要約する。

Nariya Uchida,
How Do Nanorobots Swim in Slime?,
JPSJ News and Comments 14, 05 (2017).

概要: 安田ら [J. Phys. Soc. Japan 86, 043801 (2017)] は粘弾性流体中における微小遊泳体の新しい運動モードを発見した。彼らは Najafi と Golestanian の3球スイマーモデルを線形粘弾性を持つ流体に拡張し、 遊泳速度と粘弾性特性を関係付けることによって、微小遊泳体がマイクロレオロジーの新しい測定手法として用いられることを示唆した。特に構造的な非対称性を持つスイマーはその運動が時間可逆的であっても複素粘性率の虚数部分(弾性部分)によって推進速度を得ることが示された。

*木下佳明,内田就也,中根大介,西坂崇之,
アーキアべん毛作動機構解明のための精密顕微測定技術,
バイオインダストリー 34, 61-69 (2017).

概要: 自然界には化学エネルギーを力学的な仕事に変換する、生体分子モーターとよばれるタンパク質が存在する。生体分子モーターの形や作動機構は生物種により様々であるが、人類が生み出した機械を超越した精巧な仕組みで働く。本稿では光学顕微鏡下での精密測定により明らかとなった、アーキアが有する生体分子モーターの仕組みを紹介する。 【西坂崇之(解説記事の元となった研究計画全般の統括)】



国際会議発表

2017

Poster

*Gilhan Kim, Nariya Uchida,
Lattice-based model of run-and-tumble chemotaxis of bacteria with alignment,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23, 2017), Sendai, Japan.


2016

Invited

Nariya Uchida,
Some applications of Smoothed Profile Method for active flow in and out of cells,
International Workshop on Hydrodynamic Flows in/of Cells (Nov. 24-25, 2016), Tokyo, Japan.

Nariya Uchida,
Collective dynamics of flagella, cilia and active filaments near surfaces,
Current and Future Perspectives in Active Matter (Oct. 28-29, 2016), Tokyo, Japan.

新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」