業績リスト

A03公募(2016-17) 車 兪澈

論文等 | 原著論文

2018

Takumi Furusato, Fumihiro Horie, Hideaki T. Matsubayashi, Kazuaki Amikura, Yutetsu Kuruma, and *Takuya Ueda,
De novo synthesis of basal bacterial cell division proteins FtsZ, FtsA, and ZipA inside giant vesicles,
ACS Synthetic Biology 7(4), 953–961 (2018).

概要: 細胞分裂に関わる主要な3種の膜表在タンパク質を、巨大膜小胞(GUV)と試験管内タンパク質合成系から成る人工細胞内部で合成し、膜の形状変化を観察した。3種のうちZipAは、脂質二重膜を貫通するドメインを持った膜挿入タンパク質である。このZipAが細胞分裂時にリング形成をするFtsZを膜上にリクルートし、さらに突起状に膜を形態変化させることを見出した。今回の結果は、2種類のタンパク質のみが膜上で相互作用することで、脂質膜の形を変化させることを示したものである。

Giordano Rampioni, Francesca D’Angelo, Marco Messina, Alessandro Zennaro, Yutetsu Kuruma, Daniela Tofani, Livia Leonia, and *Pasquale Stano,
Synthetic cells produce a quorum sensing chemical signal perceived by Pseudomonas aeruginosa,
Chemical Communications, in press (2018).

概要: クオラムセンシングは、一環境中における細胞密度をお互いにセンシングするバクテリアの機構である。そのシグナル分子であるホモセリンラクトン(HSL)を人工細胞内で合成し、実際のバクテリアとの間でHSLを介したコミュニケーション系を再現した。HSLは通常バクテリア細胞内で、RhlIという酵素によって合成される。本研究ではこのRhlIの合成自体から人工細胞で行なったものであるため、生細胞のように自律的に振る舞うことのできる。本研究は、人工物と生きた細胞の間で、化学物質を介した情報伝達系を実現したものであり、プログラムされたドラッグデリバリー系としての応用が見込まれる。



論文等 | 総説解説

2017

金森崇,杉本(永池)崇,車兪澈,網藏和晃,*上田卓也,
無細胞タンパク質合成系の高度化と合成生物学への展開,
生化学 89(2), 211-220 (2017).

概要: 細胞抽出液や翻訳因子から再構成したシステムを用いて,無細胞でタンパク質を合成する手法は,その簡便性からゲノムワイドなタンパク質の機能・構造解析に対応できるハイスループット性を有している.タンパク質は膜タンパク質を含め多様な形態を持っており,単なる簡便性のみならず,こうした多様性に対応できるように無細胞タンパク質合成系は進歩している.また,無細胞タンパク質合成系は,急速に発達している合成生物学における中心的な基盤技術として注目されている.合成生物学の最重要課題は,人工細胞の創成である.無細胞タンパク質合成系によりタンパク質を発現させ細胞様の機能を持たせる試みがなされているが,増殖するシステムの創出には至っていない.増殖する人工細胞の実現に求められる無細胞タンパク質合成系の技術開発についての考えを提示する.

2016

車兪澈,上田卓也,
トピックス『膜タンパク質の無細胞合成法』,
生物物理 56, 162-164 (2016).

概要: 無細胞タンパク質合成系(無細胞系)は試験管内で転写・翻訳反応をおこない, 人工的にタンパク質を合成する生化学ツールである.筆者らが構築した無細胞系PUREシステムは, 大腸菌の転写・翻訳反応に必要な酵素・因子から構成した完全再構築型の無細胞系である. そのため, 細胞由来の膜画分の持ち込みを完全に排除でき, バックグラウンドの少ない確実なデータを得られるという長所がある.この反応系に, リポソームと呼ばれる脂質膜小胞加えることで, 膜タンパク質を脂質膜上に合成することが可能である. さらに複数種の膜タンパク質を同時に合成することで, Secトランスロコンや, ATP合成酵素などのような高次構造を形成する膜タンパク質複合体の合成も可能である.今回, 我々はPUREシステムとリポソームを組み合わせた膜タンパク質合成法と, 合成産物の定量, 膜局在効率評価, 膜内配向性評価, 複合体形成評価の手法について紹介する.



論文等 | 会議録

2016

*Luisa Damiano, Yutetsu Kuruma and Pasquale Stano,
What can synthetic biology offer to artificial intelligence (and vice versa)?,
Biosystems 148, 1-3 (2016).

概要: 本会議録は、国際学会Artificial Lifeまたは、European Conference of Artificial Life (ECAL)において、L. Daminano、P. Stano、Y. Kurumaらによって長年開催されたサテライトワークショップを基とした、合成生物学と人工知能に関する学祭研究について論じたものである。概要としては、合成生物学の1ゴールである人工細胞研究により、知性あるいは認識をボトムアップ的に生物系において実装できるかを考えるものであり、これにより認知科学と合成生物学を融合させることも目的としている。



国際会議発表

2017

Invited

Yutetsu Kuruma,
Reconstruction of functional cell membrane based on cell-free system,
Cell-free Synthetic Biology Workshop (Nov. 25, 2017), Fukuoka, Japan.

Yutetsu Kuruma,
Construction of a Model Cell Membrane Applicable to the Protocell Study,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23, 2017), Sendai, Japan.

Yutetsu Kuruma,
Construction of an artificial cell for the study of early cells,
International Conference The Origin of Life – Synergy among the RNA, Protein, and Lipid Worlds (May 29-30, 2017), Tokyo, Japan.

*Yutetsu Kuruma and Taku Oshima,
Next approach to formulation of artificial membrane,
Origins of life (Jan. 18, 2017), Newcastle, UK.


2016

Invited

Yutetsu Kuruma,
Construction of artificial cell based on cell-free syetem,
EON International Workshop “Synthetic Approach for The Study of Origin of Life” (Nov. 29-30, 2016), Glasgow, UK.

Yutetsu Kuruma,
Construction of Minimal Cell Based on Cell-Free System,
Okazaki Institute for Integrative Bioscience (OIIB) Summer School (Aug. 18-19, 2016), Okazaki, Japan.




著書

2017

「人工細胞の創製とその応用」
“無細胞タンパク質合成系とベシクルによる人工細胞の構築”
車兪澈
CMC出版(2017)

概要:再構築型無細胞タンパク質合成系(無細胞系)は、タンパク質合成に関わる個々の酵素や補助因子のみから構成された無細胞系である。系を構成する因子が全て明らかになっているため、人工細胞を構築するためのプラットーフォームとして有効である。この無細胞系をベシクルに内包することで、内部でタンパク質を合成することが可能である。しかし現状での人工細胞は、自己複製能や機能性細胞膜など克服できていない問題が多々あり、本質的な解決方法は未だ確立できていない。本章はこの問題を克服するための、人工細胞構築のデザインとそのアプローチについて述べたものである。

2016

「実験医学」
“クローズアップ実験法:PUREシステムを用いた膜タンパク質の無細胞合成”
車兪澈,上田卓也
羊土社(2016), 471-476

概要:無細胞タンパク質合成系(無細胞系)は試験管内で転写・翻訳反応をおこない, 人工的にタンパク質を合成する生化学ツールである. この反応系に, リポソームと呼ばれる脂質膜小胞を加えることで, 膜タンパク質を脂質膜上に合成することが可能である. さらに複数種の膜タンパク質を同時に合成することで, Secトランスロコンや, ATP合成酵素などのような膜上で高次構造を形成するタンパク質複合体の合成も可能である. 今回, 再構築型の無細胞系PUREシステムとリポソームを組み合わせた膜タンパク質合成法と, 合成産物の定量, 膜局在効率評価, 膜内配向性評価, 複合体形成評価の手法について紹介する.
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」