業績リスト

A03公募(2016-17) 石島 秋彦

論文等 | 総説解説

2017

福岡創,蔡栄淑,石島秋彦,
たかがバクテリア,されどバクテリア,
実験医学 12, 3224-3227 (2017).

概要: 大腸菌に代表されるバクテリアは生物界では最も下等な生物と言われている.しかし,バクテリアも立派な生物で,外界の環境を認識する,外界の情報を体内に伝搬する,よりよい環境に進んでいく遊泳能力を持つ(持たない種もありますが..),という人工機械にはとうていまねのできない複雑なシステムを持っている.そのような複雑な機構を一つの細胞,たかだかフェムトリットルというとても小さな空間内に構成している.そのようなとても小さい空間ですので,構成するタンパク質も他の生物種に比べたらとても少ない数で機能していると言われている(メチル化・脱メチル化(システムのリセットに関わる)タンパク質は100個程度,リン酸化(情報を伝達する)タンパク質でも1,000個のオーダー).バクテリアの走化性,運動能力について理解いきたい.

福岡創,蔡栄淑,石島秋彦,
生命科学と光学顕微鏡ーどのようにして照明してきたか,
光アライアンス 11, 22-26 (2017).

概要: 生命科学を理解する上で光学顕微鏡は欠かせない.マイクロメートルサイズの細胞は拡大しないと,その形や内部構造などを観察することができない.さらには蛍光顕微鏡の発展により,タンパク質・DNAなどのナノメートルレベルの生体分子の動きを直接観察できるようになってきた.本編では,照射光に注目し,いかにして生体試料観察のために照明方法が工夫されてきたかを説明したい.

2016

Yuichi Inoue, Akihiko Ishijima,
Local heating of molecular motors using single carbon nanotubes,
Biophysical Reviews 8, 1-8 (2016).

概要: CNTの優れた特性のひとつに伝熱性があり,金や銅より高い熱伝導率が報告されている.この特性を利用してレーザー加熱によるガン細胞の死滅に使われる例がある.CNTの熱制御をより細やかに行うことができれば,細胞の活性化や活性を段階的に変化させるなどの活性操作が可能になり,さらには細胞内の局所部位や生体分子1個レベルまでの制御もできる「ナノヒーター」となることが期待される. 本研究では,1本のCNT(直径〜170nm,長さ〜10µmの多層CNT)上における生体分子の活性検出法の開発と,それを利用して,近赤外レーザーの局所的照射による生体分子の活性制御状態の観察が行われた.実験に用いた生体分子には活性計測が容易なものとしてミオシンが選ばれた.ミオシンは,ATP加水分解のエネルギーを利用してアクチンフィラメントを動かすタンパク質(モータータンパク)である.ミオシンをCNT上に吸着させ,そこにATPと蛍光ラベルしたアクチンフィラメントを与えると,アクチンフィラメントがCNTに沿って滑り運動することが,蛍光顕微鏡で観察された.この滑り速度は〜6µm/sで従来の報告と同等であり,CNT上でもミオシンモーターが正常な活性を有することが観察された.このとき,CNTの端部に近赤外レーザーを照射すると,熱伝導率の低い周囲の水やタンパク質には直接の影響を与えることなくCNTのみが加熱され,CNTからの伝熱によりタンパク質の温度が上昇すると考えられる.蛍光顕微鏡で観察しながら波長642nmのレーザーを断続照射すると,照射時にのみアクチンフィラメントの滑り速度が〜12µm/sに上昇し,ミオシンモーターの運動活性のリアルタイム制御が行われた.滑り速度の温度依存性から,2.7mWのレーザー照射条件におけるミオシンの平均温度上昇は12℃と見積もられた.さらに,CNT上でレーザー照射位置から離れるほど温度上昇が小さくなることから,研究グループでは,多層CNTの水溶液中における熱伝導率を1540±260Wm-1K-1と見積もった.この値は,真空または大気中におけるデータから予測される値と矛盾することはなく,また水溶液中の報告としては世界で初めてのことという. 本研究により,1本のCNT上で生体分子モーターの活性観察が可能になり,さらに,近赤外線レーザーの照射によりモーター活性の可逆的制御に成功した.本技術のナノヒーターは,ミオシンモーターに限ることなく,他のモーター分子やモーター以外の多くのタンパク質活性制御に応用が可能という.研究グループでは,本技術で細胞内の狙った分子1個だけの活性を自在に操ることが可能になり,生体分子機能メカニズムの解明や医学的応用などに貢献することを期待している. 【石島(データ解析,総括)】



国際会議発表

2017

Poster

Akihiko Ishijima*,
Computational Simulation of Spontaneous Transition between Active and Inactive in Whole Chemoreceptor Array in E. coli,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23, 2017), Sendai, Japan.




著書

2017

「少数性生物学」
“第16章 少数の分子で機能する生物” 石島秋彦・福岡 創・蔡 栄淑
日本評論社(2017)

概要:生命現象を理解するカギは「濃度」や「平均値」ではなく、少数分子の“個性的”な動態にあった。「はじめての少数性生物学」開講。
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」