業績リスト

A03公募(2016-17) 藤原 慶

論文等 | 原著論文

2018

Atsushi Sakai, Yoshihiro Murayama, Kei Fujiwara , Takahiro Fujisawa, Saori Sasaki, Satoru Kidoaki, and *Miho Yanagisawa,
Increasing Elasticity through Changes in the Secondary Structure of Gelatin by Gelation in a Microsized Lipid Space,
ACS Central Science 4(4), 477-483 (2018).

概要: ミクロゲルは広く使用されているが、力学特性の解析は困難であった。本研究では、マイクロピペット吸引を用いて脂質液滴内にて作製したゼラチンの球状ミクロゲルの表面弾性率を調べた。我々は、ゲルの大きさと反比例し、ヤング率Eが増加することを見出した。ゼラチンミクロゲルの場合、半径50μm以下では、バルクゲルの10倍もの硬さを示した。円二色性分光法およびβシートパッキングの蛍光定量法より、ミクロゲルがバルクゲルよりも構造内にベータシートを多く含むことが示された。すなわち、ゲル化ポリマーの閉じ込めサイズが、タンパク質の二次構造変化を誘起しミクロゲルの弾性を変化させることを示した。 【藤原:CDスペクトルの変化からタンパク質の二次構造がβシートスタッキングになっていることを見出し、その証明実験のデザインと遂行を行った。柳澤:研究全体のデザインと遂行・統括。Elegant Approach to the Controllability of the Mechanical Properties of a Microgel via the Self-Assembly of Internal Moleculesというタイトルの解説記事が同時に出た。】

Kei Fujiwara, Takuma Adachi, Nobuhide Doi,
Artificial Cell Fermentation as a Platform for Highly Efficient Cascade Conversion,
ACS Synthetic Biology 7(2), 363-370 (2017).

概要: 本研究では、浸透圧処理により形成されたバクテリア型リポソーム内でカスケード酵素変換を行い、人工細胞系でもバルクシステムの最大濃度(0.10M、例えば4.6g / L)に等しいレベルで最終生成物を生成可能であることを示した。特筆すべきことに、希釈条件下では、人工細胞系の変換効率はバルク系よりも著しく高かった。 我々の結果は、人工細胞を微生物のような発酵生産を行うプラットフォームとして用いることができることを示している。

2017

*Kei Fujiwara, *Miho Yanagisawa,
Liposomal internal viscosity affects the fate of membrane deformation induced by hypertonic treatment,
Soft Matter 13, 9192-9198 (2017).

概要: 人工脂質膜は、生細胞の変形パターンの物理的メカニズムを理解するために利用されてきたが、典型的な人工膜システムは、生細胞の細胞質中のものと比較して希薄成分のみしか含まない。本研究では生細胞と同様の高密度タンパク質溶液を含む巨大単層リポソームを使用することにより、内部クラウディングに由来する粘性が脂質膜の変形パターンに影響を及ぼすことが明らかにした。高浸透圧処理後、初期内部高分子濃度を高めると、リポソームの変形パターンが出芽からチューブ状に移行した。注目すべきことに、BSA、細胞抽出液という二種の高分子において、パターン転移点における粘性値が類似していた。今回の結果は、細胞質の粘性が細胞の変形を決定する重要な要因であることを示すと同時に、高浸透圧処理による変形パターンには、Viscous Fingeringのような速度論的な不安定性の関与しうることを示唆している。

Kenji Nishizawa, Kei Fujiwara, Masahiro Ikenaga, Nobushige Nakajo, Miho Yanagisawa, *Daisuke Mizuno,
Universal glass-forming behavior of in vitro and living cytoplasm,
Scientific Reports 7, 15143 (2017).

概要: 細胞質は様々な巨大分子で非常に混雑している。本研究では、ビーズ粒子を用いたマイクロレオロジーを行い、試験管により出した細胞質および生細胞の細胞質の力学を研究し、細胞質の濃度に依存したガラス転移の直接的な証拠を得た。さらに、ガラス形成挙動は、異なる種および発生段階に由来する細胞質試料において普遍的に見出された。試験管に取り出した細胞質が濃度に対し弱いガラスのような振る舞いをするのに対し、生細胞では強いガラスのような蛍光を示した。これらの結果は、生きた細胞質は、代謝によって積極的に駆動されているため、非生物の細胞とは根本的に異なるガラスを形成していることを示唆する。 

*Kei Fujiwara, Tsunehito Sawamura, Tatsuya Niwa, Tatsuki Deyama, Shin-ichiro M. Nomura, Hideki Taguchi, Nobuhide Doi,
In vitro transcription–translation using bacterial genome as a template to reconstitute intracellular profile,
Nucleic Acids Research 45(19), 11449-11458 (2017).

概要: 生命はゲノムにコードされた遺伝子が転写翻訳されることで成り立っている。本研究ではこのプロセスを試験管内で実現する手法を構築した。結果、試験内においてゲノムDNAを転写翻訳系することで、増殖期の細胞様の転写翻訳プロファイルを再現可能であることを示した。本成果は生命の設計図解明に大きく貢献する。

Chikako Kurokawa, Kei Fujiwara, Masamune Morita, Ibuki Kawamata, Yui Kawagishi, Atsushi Sakai, Yoshihiro Murayama, M Nomura Shin-ichiro, Satoshi Murata, *Masahiro Takinoue, *Miho Yanagisawa,
DNA cytoskeleton for stabilizing artificial cells,
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 114, 7228-7233 (2017).

概要: リポソームおよび脂質液滴は、多くの用途に使用されてきたが、機械的な脆さが問題であった。 この問題を解決するために、我々はDNAナノテクノロジーで人工的な細胞骨格を構築した。 DNA細胞骨格により、機械的安定性は著しく改善され、浸透圧ショックのような刺激に対する耐性が生じた。 その生体適合性および設計変更の容易さのために、DNA細胞骨格は、リポソームおよび脂質液滴の安定化のためのツールになり得る。 【Miho Yanagisawa: 研究の全体的なとりまとめとDNA細胞骨格と形成と物性の評価】



国際会議発表

2017

Poster

S. Kohyama, N. Yoshinaga, Miho Yanagisawa, N. Doi, K. Fujiwara,
Confinement Effects on Reaction-Diffusion Waves of Min System Emerged in Lipid Droplets,
International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017 (Nov. 20-23, 2017), Sendai, Japan.


2016

Invited

*Kei Fujiwara,
A bacterial reaction-diffusion system entrapped in artificial cells,
Current and Future Perspectives in Active Matter (Oct. 28-29, 2016), Tokyo, Japan.

*Kei Fujiwara,
Reaction-diffusion wave of Min system reconstituted in artificial cells,
Elucidation of configuration structure in micro behavior and collective pattern formation (Sep. 12-14, 2016), Kyoto, Japan.




著書

2017

「人工細胞の創製とその応用」(編)
“無細胞システムによる生命システムの理解” 藤原慶
CMC出版(2017)

概要:無細胞条件で生命システムを解析すると、細胞内と異なる振る舞いが見られる。細胞抽出液や精製された生命システムを題材に、どのような違いが観察されるかについて解説した。
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」