業績リスト

A03公募(2016-17) 宗行 英朗

論文等 | 原著論文

2018

Suyong Re, Shigehisa Watabe, Wataru Nishima, Eiro Muneyuki, Yoshiki Yamaguchi, Alexander D. MacKerell Jr. and *Yuji Sugita,
Characterization of Conformational Ensembles of Protonated N-glycans in the Gas-Phase,
Scientific Reports 8, 1644 (2018).

概要: イオンモビリティー質量分析法(IM-MS)は生体分子の構造変化を衝突断面積から調べることができ,最近の技術の進歩によって微細な立体配座の違いで糖鎖異性体を分離できるとして注目を集めている.しかし,糖鎖は複数の安定構造をとっているため,構造を特定するのは困難である.今回,我々は,気相中のエレクトロスプレーイオン化の条件下でのN-グリカンの立体構造アンサンブルをレプリカ交換MD法を用いて解析した.その結果,衝突断面積で同位体を分類すると,それがN-グリカンの化学組成やプロトン化状態を反映する折り畳み構造を反映していることがわかった.N-グリカンの衝突断面積の物理化学的基礎付けはIM-MSによる測定結果の解釈だけでなくより複雑な糖鎖の衝突断面積の推定にも使える.

2017

*Sho Fujii, Ryuta Fukano, Yoshihito Hayami, Hiroaki Ozawa, Eiro Muneyuki, Noboru Kitamura, and *Masa-aki Haga,
Simultaneous Formation and Spatial Patterning of ZnO on ITO Surfaces by Local Laser-Induced Generation of Microbubbles in Aqueous Solutions of [Zn(NH3)4]2+,
ACS Applied Materials & Interfaces 9, 8413-8419 (2017).

概要: [Zn(NH3)4]2+溶液中のITOの表面を1064nmのレーザーで局所的に加熱し,マイクロバブルを作ることによって,ITO上にZnOのナノクリスタルで幅1μm厚さ60nmのパターンをマスクを使うことなく描画できた.ZnOのナノクリスタルができていることはX線回折顕微ラマン分光によって確認した.このパターン形成の機構は,マイクロバブルの近傍でマランゴニ対流が起こることで,溶液に溶けた [Zn(NH3)4]2+が素早く濃縮・蓄積され固体・液体.気体の接点でZnOのナノクリスタルができたものと考えられる.

2016

Kano Suzuki, Kenji Mizutani, Shintaro Maruyama, Kazumi Shimono, Fabiana L. Imai, Eiro Muneyuki, Yoshimi Kakinuma, Yoshiko Ishizuka-Katsura, Mikako Shirouzu, Shigeyuki Yokoyama, Ichiro Yamato and *Takeshi Murata,
Crystal structures of the ATP-binding and ADP-release dwells of the V1 rotary motor.,
Nature Communications 7, 13235 (2016).

概要: V1-ATPaseは多くの生体膜系に存在する,非常によく保存されたATP駆動型の分子モーターである.我々は最近 Enterococcus hirae由来のA3B3DF (V1) 複合体について加水分解待ちの状態に対応する結晶構造を報告した.今回ヌクレオチドのないV1-ATPaseをADPに浸すことによって得られた他の2つの反応中間体に対応する構造を報告する. 20 μM ADP存在下ではADP分子が3つの触媒部位のうちの2つに結合し,三つめの触媒部位にATPが結合するのを待つ状態となった.2mM ADP存在下ではすべての触媒部位にADPが結合しADP遊離を待つ状態となった.以前からの知見と併せてV1-ATPaseの回転機構のモデルを提案する. 【宗行英朗 役割は第1著者の鈴木氏と共に蛍光測定とそのデータ処理を行い,V1-ATPaseに対するADP結合の様子を溶液系で検討した.】

*Jun Tamogami, Keitaro Sato, Sukuna Kurokawa, Takumi Yamada, Toshifumi Nara, Makoto Demura, Seiji Miyauchi, Takashi Kikukawa, Eiro Muneyuki, Naoki Kamo,
Formation of M-Like Intermediates in Proteorhodopsin in Alkali Solutions (pH ≧~8.5) Where the Proton Release Occurs First in Contrast to the Sequence at Lower pH,
Biochemistry 55(7), 1036-48 (2016).

概要: 海洋性細菌の持つ光駆動型プロトンポンプであるプロテオロドプシンのプロトンポンプ活性を広いpH範囲で精査したところ,アルカリ性で新たな中間体を含むフォトサイクルが見つかり,そのフォトサイクルではプロトンを輸送するときのプロトンのポンプ蛋白への取込と吐き出しの順番が中性と異なっていることがわかった.更に驚くべきことに,中性条件とアルカリ性条件ではプロトン輸送の方向が逆転することを示唆する結果が得られた.
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」