業績リスト

A04公募(2016-17) 和田 浩史

論文等 | 原著論文

2018

Keigo Nakamura, Tetsuya Hisanaga, Koichi Fujimoto, Keiji Nakajima and *Hirofumi Wada,
Plant-inspired pipettes,
Journal of the Royal Society Interface 15, 20170868 (2018).

概要: ゼニゴケの雌株は特徴的な傘のような形をしており、 水を介して受精を行うために適した構造をもつ。我々はこの傘状の形態に着目し、3Dプリンタを用いてこれを模したデバイスを造形し、その性質を実験的に調べた。実験結果とスケーリング理論を組み合わせ、この簡易なデバイスが毛管長をうわまわるサイズの水滴を掴み、かつ滴下できることを実証した。加えて、ピペットとしての最適な形状を決定した。

*Tomohiko G. Sano and Hirofumi Wada,
Snap-buckling in asymmetrically constrained elastic strips,
Physical Review E 97, 013002 (2018).

概要: オイラー座屈が生じた円弧を凹ませて外力を加えると円弧の曲がった方向が逆転する「飛び移り座屈」の研究には長い歴史があるが、境界条件の非対称性の様な外在的な性質に焦点を当てた研究は見過ごされてきた。非対称な境界条件は板の一端が固体表面と摩擦するような状況で自然に現れる。そこで上端をクランプ、下端をヒンジ条件として非対称に薄い弾性板を座屈させた状態を用意し、上端を左右に動かす実験を行った。すると曲げ方向が逆転し、飛び移り座屈が起きる。その力応答は履歴依存的ではあるが鏡像反転した操作によって再利用可能であり、飛び移りの際に不連続に変化する。本論文では、この「境界条件によって駆動された飛び移り座屈現象」の起こるメカニズム、力応答関係、ダイナミクスを実験的に明らかにし、実験結果を説明する新たな厳密解を構成した。 【Editor's Suggestion に選ばれた。】 

2017

Tomohiko G. Sano, Tetsuo Yamaguchi, and Hirofumi Wada,
Slip Morphology of Elastic Strips on Frictional Rigid Substrates,
Physical Review Letters 118, 178001 (2017).

概要: 細い物体同士が相互作用し静止する現象の素過程として、弾性棒または弾性板を基板に対して鉛直に押し付け座屈する現象を考えた。板を押し付けるとまず対称性を破り座屈し、更に押し込む事で曲率を解消する方向に下端が滑る。この振る舞いは一見単純そうに見えるが、実は板の弾性、幾何学、摩擦や重力などが複雑に絡み合った現象である。弾性論の厳密解、数値計算、実験を組み合わせ、細い弾性体の剛体基板上での座屈形態を統一的に理解することに成功した。

2016

Yasuaki Morigaki, *Hirofumi Wada and *Yoshimi Tanaka,
Stretching an elastic loop: Crease, helicoid, and pop-out,
Physical Review Letters 117, 198003 (2016).

概要: 紙をリボン状に切り出し、輪っかをつくってから両端をひっぱる。十分輪っかが小さくなったとき、ある場合にはしわができてそのまま折れてしまうが、別の場合には輪っかにたまった「ねじれ」が突如、リボン全体に伝播してリボンが飛び上がる。この簡単な現象を実験、理論、シミュレーションを組みあわせて詳細に調べた。異なる転移を支配する幾何学的なパラメータおよび特徴的な長さスケールを特定し、リボンのふるまいを決める幾何学と力学の深い結びつきを明らかにした。 【Editor's Suggestion に選ばれ、表紙のカバーになった。 APSのPhysics Synopsisで紹介された。】

Daichi Matsumoto, Koji Fukudome and *Hirofumi Wada,
Two-dimensional fluid dynamics in a sharply bent channel: Laminar flow, separation bubble and vortex dynamics,
Physics of Fluids 28, 103608 (2016).

概要: 鋭い曲がりを持つ流路内の2次元的な流れを、ナビエストークス方程式の直接数値計算によって調べた。レイノルズ数10^4までのながれを分類し、層流の不安定化、エッジ後方での剥離、渦の周期放出のダイナミクスを特徴づけた。スケーリング則をもちいて流量損失や渦列のふるまいを議論した。これらの結果は、複雑な分岐構造をもつ肺気管内の空気の流れを理解するために役立つかもしれない。

Hirofumi Wada,
Structural mechanics and helical geometry of thin elastic composites,
Soft Matter 12, 7386-7397 (2016).

概要: 弾性リボンと膜からなる複合材料がらせんの形状をとるための力学的な仕組みと条件について理論的に考察した。結果は、ある種のバクテリアのらせん細胞やその他らせん的なかたちをとる自然界の構造物の理解に役立つ。
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」