第1回公開シンポジウム

非平衡物理学の挑戦 ―物理から生命への架け橋―

当日は悪天候にもかかわらず、100名以上の参加があり、熱のこもった講演に引き続き、会場からも活発な質問が行われました。
今回参加してくださった皆様に心から感謝いたします。

日時
2014年 2月15日(土)13:00-16:30
場所
東京大学本郷キャンパス理学部1号館小柴ホール
対象
本シンポジウムは大学学部生を対象とした講演を予定していますが、一般や高校生の参加も大歓迎致します。
入場料
無料
定員
160名 事前参加登録は締切りました。直接会場にお越しください。
プログラム
13:00-13:10挨拶:佐野雅己(東京大学 大学院理学系研究科)
13:10-13:55

佐々真一(京都大学 大学院理学研究科)
「ゆらぎ ~ミクロとマクロの架け橋~」

 原子分子が舞台となる空間スケールと私たちが活動する舞台の空間スケールは、大雑把にいって8桁離れています。この8桁をつなぐ基本的なアイデアは、4桁目に足場をおくことです。この画期的な考えが、アインシュタインのブラウン運動の理論(1905年)の核心をなしています。そして、100年後、生物機能に関わるミクロとマクロの関係が新たに問われています。今必要とされる理論は何でしょうか。アインシュタインを学び、研究現場の興奮も感じましょう。

13:55-14:40

今井正幸(東北大学 大学院理学研究科)
「物質から生命へ ~最も単純な細胞をつくる~」

 生命がどのようにして分子の集合体から誕生したのかを明らかにする事は生命とは何かという事を明らかにする事です。最近、生命として最小限の機能をもつ仮想的な細胞(プロトセル)を考え、それを人工的に創成することにより物質から生命への進化の道筋を明らかにしようとする研究が行なわれる様になってきました。物質科学を基礎に、分子集合体が生命へと進化する時にクリアすべき素過程を一つ一つ再現しながら、生命誕生のシナリオについて一緒に考えませんか?

14:40-15:00休憩
15:00-15:45

中垣俊之(北海道大学 電子科学研究所)
「粘菌の知性 ~細胞の賢さを探る~」

 最も原始的な生命体である単細胞生物が、実はなかなか賢いことがわかってきました。迷路の最短経路を探し出せますし、もう少し難しい幾何学的なパズルでも答えをみつけます。このような単細胞の行動にみる「賢さ」についてお話します。実験に用いた生物は、真正粘菌モジホコリの変形体という巨大なアメーバ様生物です。あまり耳にすることの無い生き物ですが、実はそこらの森にありふれています。一見するとパンに塗り広げたマヨネーズのような姿形をしていて、もちろん脳も神経もありませんが、そこはやはり生き物ですから、粘菌は粘菌なりの必死の生活を営んでいます。どれほどの賢さか、そしてその賢さがどのようなしくみで実現されるのか、についてお話します。

15:45-16:30

佐野雅己(東京大学 大学院理学系研究科)
「動的で非平衡な世界」

 ガリレオやニュートンから始まった物理学は、素粒子という極微の世界から、宇宙という極大の世界までを理解する強力な手段として、数理と観測を両輪にして発展してきました。その一方で、我々の身の丈のスケールで起こっている現象は、複雑すぎるため、これまで置き去りにされてきました。今、そこにスポットを当てた物理が生まれています。雪の結晶や砂漠の風紋、そして生命現象など、独りでに形ができる現象は、エネルギーや物質が常に流れることで初めて起こる現象です。それらを可能にしている「動的で非平衡な世界」の法則を探る物理学の最近の発展についてお話します。

主催
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」
  事務局連絡先
  Tel : 04-7136-5338
  E-mail: sfs_at_issp.u-tokyo.ac.jp
新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」